自己規制をいかに外せるかがカギになる
私たちが、創造性(クリエイティビティ)を発揮するとき、脳は一種の「脱抑制」状態になっています。通常、脳はシステムとしてのバランスを取るため、各回路の働きを抑制して自己規制をかけ、潜在能力を100%出し切っていません。
脱抑制というのは、衝動や感情をコントロールできなくなり、適切な抑制がきかない状態のことで、薬物やアルコールなどによって起こることが知られています。
そのため、脱抑制は好ましくないことに思われがちですが、創造性を発揮するためには、これが必要になってくるのです。
私たちは、自分の脳に「思いつけ」「ひらめけ」と強制することはできません。脳の回路はある意味、勝手に働いていて、何らかのアイデアなどを思いついたとき、自分でハッと気づくものです。
これが、脱抑制状態のときに起こるのです。逆にいえば、自己規制をいかに外すかということが、創造性を発揮するうえでのカギになるわけです。
そのための第1歩が、成功体験を増やすことです。脱抑制によって脳から積極的にアウトプットをすることで、いいアイデアが生み出されるという経験を1つずつ積み重ねることによって、だんだんと脱抑制ができる脳になっていくはずです。
空気を読むことを求められたり、同調圧力を気にしたり、日本は抑制の強い国だといわれています。
こうした脳の使いかたを続けていると、脱抑制は難しくなっていきますから、ときには抑制を外して、自分の思いや感情を素直に表に出してみてはいかがでしょう。「ちゃぶ台返し」も、たまには必要だと、私は思っています。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.24