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30人弱いた部員はわずか6名に…部員を激減させた全国大会を目指す為の方針転換とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

デモンストレーション

平成2年の秋季リーグを終え、私はコーチから監督へと昇格した。この時に平成元年に4部リーグから始まり3部昇格、そして3部優勝を目指すところまで来ていた。このタイミングで当時の北海道地区大学野球連盟が将来的な全日本大学選手権の出場枠拡大を睨み、札幌地区とそれ以外の地区で分割。北海道学生野球連盟と札幌学生野球連盟の2つに分かれた。

当部は北海道学生野球連盟の2部リーグで戦うことになり、目標であった1部昇格、全国大会出場により近い立ち位置に進むことができた。そこで私は冬のトレーニング、強化練習に入る前に選手全員を集めて話をした。

「今までは、先週の思い通りに好きなように野球をやらせて楽しくやらせてきたが、その方針を変える。勝つための野球。1部昇格。全国大会を目指す厳しい野球をする」それを聞き、うなずく学生もいたが、嫌な顔をする学生もいた。しかし、私はその使命を受けてここに来ている事を何回も話した。

その結果、30人弱いた部員はわずか6名に。その他の選手は退部してしまった。目標を下げることや目的を変えようなどと甘んじる訳にもいかず、6名でもやるしかなかった。翌春にはスポーツ推薦制度を導入して頂き、15名の学生を受け入れられる事になった。

しかし15名を取るにも新しい高校生を勧誘するにも、6名しかいない部に誰も来ないであろう。そこで今までいた部員に「もう少し部に留まって欲しい。次の高校生が来るまで留まって欲しい」とお願いしたが「辛い練習はしたくない」と断られた。

それでも私は引き下がらず折衷案として「高校生がこちらに来た時だけでも良いから、練習参加して部員でいてほしいと。バイト代としてお金も払う」とまで言って、なんとか了解を得た。

新1年生に見せようと思ったのは、規則正しさが強調される一糸乱れぬアップだ。それだけを2か月ほど練習させ、アップまでの統率は完璧なものとなった。より良く見せようと網走市営球場も借りた。

選手集めは、東京・日本学園高校で監督をしていた時の繋がりが大いに生かされた。

ちょうどバブルが絶頂から弾け始めた頃だったので、進学率はとても高く野球をやりたいという高校生が多い時期でもあった。

 

全国の高校監督に連絡し「新しいチームの歴史を作るため、がむしゃらに取り組める人間を送って欲しい」と頼んだ。こうした生徒たちに、我々の一糸乱れぬ統制の取れたアップは効果てきめんだった。15名のスポーツ推薦枠の選手が決まり、彼らはほとんどがキャプテン、副キャプテンの経験者だったこともあり、チームの礎を築く事に、この後大きく貢献することになる。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。