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「タンポポ摘み」で野球が強くなる基になる要領の良さ/考える力/状況判断力が身につく理由とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

タンポポ

まとまりも生まれチーム状態も良くなってきた。あっという間の春が来て5月のリーグ戦に向け急ピッチに色々な事が進み始めた。ここで今まで通りグラウンド、道具の整備、寮の整備と色々な事をきめ細かく指示し、それを選手たちが忠実にやり始めていた。少し大学の野球部らしくなり始めていた。

朝4時半頃に起き、5時にはグラウンドに立って練習をしていた。特に北海道の朝は早く2時半になれば夜が明ける白夜である。明るいからには練習しない理由は無い。

練習の前に必ずすることがあった。外野のタンポポを抜くことだ。これはどんなに彼らが手入れを細かくしていても、どこからか種が飛んできて花が咲いてしまう。彼らは練習が始まる前に監督の私に叱られないように、タンポポをひたすら、ひたすら摘み続ける。それが練習前の大変な作業だ。

しかし、それをやることにより彼らがグラウンドを大切にし、また、グラウンドをいかに良い状態にできるかを試行錯誤する様になったきっかけとなったのだ。

タンポポは朝に摘み取っても昼にはまた咲いてしまう生命力の強さがある。ただ都会から来ている選手たちは、そのことが分からない。蕾も摘み取らないと咲いてしまうのである。

また、朝日が上がり気温が上昇するとタンポポはあっという間に花を咲かせる。私はそれを知っているので朝はそれほど文句は言わないが、わざと昼休みにタンポポ点検と言って外野を回って歩く。すると必ず1、2輪は咲いている。それでまたグランドの整備が悪いと厳しく叱る。

 

何回も何回も繰り返していくうちに、彼らは学習をする。タンポポは根から取らないといけないと気が付く。蕾が有ればそれも摘まなければいけない。その試行錯誤こそ、野球が強くなる基になるのだ。要領の良さ、考える力、状況判断力だ。たかがタンポポを摘む事一つにしても、色々な学びの一つになるのである。

 いわゆる「アンテナを張る」ということだ。しかし彼らはまだ子供なので、そこまでが精一杯である。ある時、「お前たちな、タンポポを刈るのは上手になったが、もう少し色々考えたら良いんじゃないか?お前たちは東京農業大学の学生だよな」「植物の事も勉強しているんじゃないのか?」と話をしてみた。

それはあくまでヒントであったのだが、私が意図する事に気が付く学生がいつ出てくるのかも楽しみであった。1ヶ月くらいかかったであろうか、学生たちがグラウンド外のタンポポを芝刈りで刈る様になった。

大切なのはそこなのだ。タンポポの種が飛んでくる元を絶たなければ、グラウンドのタンポポは絶対に無くならない。根を取らなければ必ずまた花が咲いてしまう。それを彼らが気づき、グラウンド外のタンポポも刈る様になった時、少し彼らも大人になった様に感じた。

人を育てるという事は、考える力をつけさせる。判断を付けさせる。思考を付けさせる。何かを計画させる。それだけではなく、その答えに辿り着くためのヒントを与える。答えはあくまで彼らに出させなくては身にならない。

単なるタンポポ摘みではないことを彼らにそうやって気づかせた。そこから要領が良くなったといえば聞こえが悪いかもしれないが、色々と考え、自分たちで試行錯誤するようになったのである。

はっきりしているのは、本当に知恵のある子、要領の良い子は早く大人になっていく。その早く大人になっていく事で先が読める様になり野球が上手くなる。ひいては社会での適応力が備わると思うのである。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。

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