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コーチやトレーナーに練習を任せる為に必要なチームの方針とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

任せることも大事

監督になってからも当時は選手獲得のために1年365日のうち200日くらいは外に出ていた。これは雪により野球をやれる時期が少ないこともあった。グラウンドが雪に埋もれる期間はトレーナーにトレーニングを任せた。「野球よりまずは強い体を作れ。そうすれば強い心と技術が伴う」。そういうモットーだった。逆に言えばその200日以外は野球に全力で集中していた。

「心技体」とよく言うが、うちのミーティングで言うのは「体心技」の順番。体をまず作って、その強い体に心を入れて、技術はその後だ。これは現在指揮を執る東京農業大の世田谷キャンパスに来てからも体心技と言っている。

話を戻すと、これだけ私が外に出ているのだから、「任せる」こと、「任せ方」も大事になってくる。私が1人でなんでもやってしまうのではなく、コーチや学校関係者とも上手く連携を取りながらということを意識している。その当時は大学のキャリアセンターの課長をしていたので、電話で連絡をこまめに取ったり、野球のことはコーチに、トレーニングの時はトレーナーに任せることも多かった。

会社組織と一緒。一人じゃ何もできないから人を回さないといけない。ただ、できたばかりの若いチームだからコーチが何人もいるわけではない。そのため、選手一人ひとりの自覚を持たせるようにもしていた。「ボスがいないと何もできません」という組織ではダメ。方針を決めて、「樋越勉の野球とはこういうものだよ」「これができないとレギュラーになれないよ」と伝えて、そこから彼らコーチ陣の引き出しの中で教えてもらえばいい。

 

自分の中だけで野球をやって、下克上で退任させられる監督が結構いる。でも一流企業で、そんなことは少ない。一流企業はそういうところが違う。親分がいて、その人が歴史を作って、社風はこうだよと引き継いでいく。信頼される一流企業というのは、そうしたイズムがある。野球もそうでないといけない。

 

私が離れた後のオホーツクキャンパスも、スタイルは大きくは変えずに2019年の大学選手権で4強入りを果たした。選手たちにも三垣監督の考える「これをしないと試合には出られない」というのが伝わっていたのだと思う。会社もそうで、社風を理解して働くことで組織は利益を得ていく。スタイルをいたずらに変えたら選手は戸惑うだけ。「こうなったらウチはこうする」というものがあれば絶対に強くなる。そのためには任せる時は任せる。

三垣に引き継げたのもそうしたところがあるからだ。1つの方針があれば、誰がやっても誰がいてもソツなくできる。銀行だって支店長が変わっても、大きなことは変わらないはず。だから今、この世田谷でも「農大のカラー」というものを作らなくてはいけない。 遊ぶこともオンとオフのメリハリさえしっかりしていればOK。こないだ顔を出したオホーツクのOBも「監督に隠れて遊んでましたよ」って言っていたけど、私はそれも全部知っていた(笑)その点、今の子は真面目でオンとオフの境目があまり無い子が多い。だから難しいね。オンの時にもっとガッとやって欲しいなとは思う。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。

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