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日本ハム玉井大翔が真面目にコツコツ取り組み掴んだプロへの道とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

思わぬ掘り出し物

玉井大翔 2014年度卒・かずさマジック、日本ハム(2018-)

春のまさかのリーグ戦敗退から秋の全国ベスト4へ飛躍した要因には、玉井の存在が大きかった。春の負けは自分の責任だという気持ちを持っていて、秋の彼は悲壮感すら漂うほどの気迫で投げていた。

玉井は旭川実業高校で甲子園に出ていたが公式戦ではほとんど投げていない3番手投手だった。当時の監督が「本当はもっと使ってあげたいんだけど、もう2人の投手が良くて……」という話をしていた。1人は東都の大学に進み、もう1人は巨人に行った成瀬功亮だった。実は成瀬もうちへの入学を予定していたのだが、甲子園で145キロを計測。そうしたら巨人に育成選手として持っていかれてしまった。

ただ、その2人の投手を観に行った時に玉井を発掘することになる。2人を観終わり「では成瀬くんをぜひウチにお願いします」と言った後、たまたま1人で一生懸命投げ込んでいる細身の投手を見つけた。「2年生にしては良いボールを投げているな」と思った。もう少し見てみるとスライダーのキレも凄いじゃないか。

 

帰り際、旭川実業の監督に「来年楽しみな2年生がいますね」と聞くと、「いえいえ、あの子は3年生です」と聞いて驚いた。さらに話を聞くと、網走の隣にある佐呂間町の出身だという。こうしてお目当てとして獲りに行った2人にはフラれたが、結局は玉井が来ることになった。だが、彼は本当に掘り出し物だった。とにかく練習を一生懸命するし、オープン戦で登板させても好投する。高校時代に3番手だったので「投げたい!」という気持ちの強い子だった。

 

そこで1年の春の開幕戦で思いきって先発させてみた。すると、いきなりノーヒットノーラン。そこで自信を掴むと、一気にうちのエースになっていった。足踏みなくくことができた。群れずに、自分のやるべきことを黙々とやることができた。体も強かった。「俺の道を行きます!」という気概があった。

順調に成長していったが、4年の春に「自分がこのチームを勝たせるんだ」という思いが強すぎて空回りした。得意のスライダーに頼りすぎた分、ストレートの質が悪くなってしまった。ストレートを打ち込まれて、全国に行けなかった。秋は風張が先発で全力で行けるところまで行き、その後を井口が継いで、玉井が抑えでいくという形で、なんとか神宮大会に進むことができた。

進路は春にストレートが135キロくらいまで落ちてしまったので、プロは既にもう手を引いていた。そこで世田谷キャンパスでコーチをしていた時の教え子である久保涼平がコーチをしていたかずさマジック(現日本製鉄かずさマジック)に預けることになった。「2年でプロに頼むよ」と伝えて。2年目の秋も好調だったのだが、ドラフト会議でなかなか指名はされず、ようやく8位で日本ハムに指名された。

 

プロでも1年目から一軍で登板し2019年には65試合に登板。活躍してくれていることを嬉しく思う。在学中は「スライダーをどのカウントで使うべきか?」ということはよく話した。そうした中で、彼なりになにかを掴んでいったのだろう。真面目でコツコツやれる子。社会人野球でしっかり力をつけてくれたからこそ、今があるのだろう。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。

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