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周東佑京など多くのプロ野球選手をオホーツクから生み出せた要因とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

網走ドーム

あらためてになるが、多くのプロ野球選手をオホーツクから生み出せたのには様々な要因がある。

技術的な面で言うと長い冬の中で、基礎練習を相当やり込める。冬の間に雪でできることが限られているからこそ、細かい技術練習を徹底してやれる。

これには『網走ドーム』の建設も抜きには語れない。

 

1997年春に全国8強入りを果たすと、現在の冬場の練習場所となる屋内施設のオホーツクドームが建設された。

当時の市長が「何に困っていますか?」と聞くので、「冬の間にノックができないことです」と答えると、作ってくれた。室内練習場というとまるでオホーツク野球部のためだけのようだから、室内多目的競技場ということで建設された。私の同級生がミズノにいたので、作れるか? と聞いたら作れると言うので、作ってもらった。天井は東京ドームと同じものを使っている。だから気圧で屋根を押し上げているのだが、いっぺんに開いて空気を出し入れすると萎んでしまう。一度、選手が入って来ているタイミングでマネージャーが倉庫を開けてしまい大変なことになったこともあった(笑)。

失敗は冬のことしか設計で考えていなかったこと。窓は圧が下がるので付けられない。なのにボイラーしか付けずにクーラーを忘れたもんだから、夏は40度くらいになってしまう(笑)。「選手権の神宮はこれくらい暑いんだから、神宮では戦えないぞ!」と今は開き直っている。また、計画当初は90メートルくらいの大きさで作るはずで予算が億ついていた。そしたら、その〝10億〟に噛み付く奴がいて、予算が6億に削減されて予定していた大きさにならなくなってしまった。

あれが10億付いていたら、雨でも練習できて、いろんなスポーツのキャンプを誘致できたのに、と今でも悔やんでいる。しかし、『網走ドーム』が野球部の強化に欠かせないものであるのは間違いない。言うまでもなく、冬に練習にしっかり打ち込めるようになったからだ。冬場はそこでトレーニングや、バントだけでの紅白戦(バスターまではOK)でバント技術やサインプレーを叩き込んだ。できないことを嘆くのではなく、できることを突き詰めた。

そして冬場の寮から学校およびグラウンドまでの道のりを7キロ走ることも、心身の鍛錬に欠かせないものだと考える。寒い時期で氷点下20度にもなる環境の中、白い息を吐きながらひたすら走る。顔は凍てつくような感覚にもなるだろう。近年では「走り込みの是非」が問われている。最近の科学的な理論もそうであるし、著名なプロ野球選手や元選手も疑問を呈していることはある。当然、その流れは学生たちにもあり「長距離走ることに何の意味があるんですか?」という風潮がある。

ただ私としては必要だと考える。いろんなことを言う人がいるが、何をやるにも体力をつけることが必要だ。野球の技術上達には欠かせない反復練習をするための、心身両面での耐久力はこの走り込みによって作られる。もちろん闇雲に走ればいいというわけではない。ペチャクチャ喋りながら走っていてはダメだ。徒党を組んで愚痴を言い合うのではなく、個々でこの辛さをどのように乗り越えるのか、楽しい思考に持っていけるかが大事。運動生理学などで言えば「長距離はいらない」という話なのかもしれない。5キロも10キロも要らないとは思うが、ウチの練習では他にも12分間走で3000メートル以上走るという練習がある。9回を戦う体力もそうだし、精神力も必要だ。そのためには必要なことであると思う。

多くの選手をプロに送り込めたのは、そもそも「プロに行ける」素材を集められたことも大きい。「見極められた」というほうが正しいかもしれない。プロ野球選手になるには、やはりそれ相応の素材が無くてはいけない。息子の優一にしろ「親の七光り」だなんて言われたこともあったが、結果を残したからこそ育成選手とはいえソフトバンクに拾ってもらえた。素材の見極め方、見出し方という点では花屋での〝目利き〟の経験も大いに生きている。花というものは、もともと綺麗なものだ。その中でも「安くても綺麗に見えるもの」がブームになったりする。

それと一緒ではないか。同じ赤いバラでも様々な光沢があるのだが「咲いた時にどうなるのだろう」と想像することが大切だ。選手たちと同じで、価値(注目)が低く見られている素材を高く売れるようにすることが私の腕の見せどころだ。プロ野球に進んだ16人の選手たちの中で、大学入学時点で実力と実績を兼ね備えていたのは小斉くらいではないか。彼にしたって、PL学園の部内の不祥事によって最後の夏を奪われるという経験をしている。でも、三垣らPL学園出身者の飛躍もあって彼もウチに来てくれた。

最初の栗山から最近の中村やブランドンも、そこまで有名な選手ではなかった。現在指揮を執る世田谷キャンパスでも2022年くらいからはプロを輩出できるのではないかと思っている。そう期待を抱かせてくれる選手が何人かいる。彼らを鍛えて、夢を掴ませてあげたい。また、三垣に託したオホーツクも素材集めが大切だろう。今の4年生までが私が獲得した選手たち。3年生以下にも私が紹介した選手はいるが、多くは彼が発掘し育てた選手たちだ。いかにして育成するか。三垣イズムが出てくれば、チーム作りも進んで行くだろう。来年の春あたりが大切になるはずだ。

いつかはウチ(世田谷キャンパス)とオホーツク、(系列校の)東京情報大で同時に全国大会に出ることが当面の目標だ。まだウチのチームは東都大学野球の2部リーグなので、まずは早く挑戦権を得られる1部に上がりたい。「網走から日本一を目指せるものを作る」ということができた自負はある。街の人もすごく協力してくれる人がたくさんいて、その数は30年間でとてつもなく増えたと思う。残念なのは、「日本一」が達成できなかったことだ。それは三垣に託してきた。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。

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