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ピッチトンネルを作るのに全投球の70%以上でストライクをとらなければいけない理由とは?【革新的投球パフォーマンス】

Text:高島誠

ラプソードをどう使うか【初級編】

●ピッチトンネルを一つ作ろう
近年、「ピッチトンネル」という言葉をよく聞くようになりました。投手と打者は18.44mの距離で対峙し、140㎞/hのストレートは約0.45秒でキャッチャーミットに到達します。一方、打者がコースや球種を判断し、打ちにいくと決めるまでに使える時間は、物理的に考えて0.2秒未満。距離に直すと、ホームベースから7.2mの空間に到達するまでに打ちにいくかの判断を求められることになります。

逆に言えば、投手はこの条件を利用して打ち取りにいくことができます。ホームベースから7.2mのところに仮想空間「ピッチトンネル」があるとし、この小さい輪の中に同じ軌道でストレートと変化球を通していけば、打者は球種を判断しづらく、アウトにする確率を高めることができます。打者は基本的に投球の軌道をイメージして打ちにいくので、「錯覚」を利用して打ち取りにいくわけです。

そこで入門編として、まずはピッチトンネルを一つ作れるようになりましょう。その第一歩が、全投球の70%以上でストライクをとれるようになることです。

なぜ70%以上のストライク率が必要かと言うと、60%のストライク率では5球を投げた場合、3球がストライク、2球がボールです。ストライク率50%に下がると、ストライクとボールはそれぞれ2.5球。これでは常に四球のリスクがつきまとい、とにかくストライクをとることが最優先となり、ピッチトンネルを作る余裕が生まれません。まずは70%以上の確率でストライクをとれるようになりましょう。

そのためには覚える変化球の選択もポイントです。ストライク率を高めるために有効なのが、カットボールやツーシーム、チェンジアップなど〝小さく〟変化する球種。これらはすべて、握りを変えるだけでストレートと同じ投げ方です。変化が小さいのでストライクをとりやすく、打者の手元で変化する球種なのでピッチトンネルも作りやすい。つまり「錯覚」を起こしやすくなるので、ストレートに強い打者にもバットの芯を外して打ち取ることができます。


一方、日本ではスライダーやカーブなど〝大きく〟変化する球種が高校野球でもよく投げられていますが、これらをコントロールするのは容易ではありません。単純に曲がり幅が大きいので、捕手の構えた位置=終着点に投げようと思うと、かなり前の地点から曲げていく必要があります。

スライダーを大きく曲げようとして手首をひねって投げる投手もいますが、それでは制球が難しくなるばかりか、肘への負担もかかります。回外、つまり腕が外側に回りながらリリースされるストレートとは逆の動きになるので、ストレートを投げる際に悪影響が及び、球威や制球力の低下を招くケースも少なくありません。


カーブは3度程度の発射角度で投じられる場合が多く、同じ角度でストレートを投げると、いわゆる〝クソボール〟というほど高めに行きます。これではピッチトンネルを作れません。一般的にストレートの発射角度は0度程度ですが、カーブとストレートでリリースの発射角度を変えると、ボールの出どころで球種を見極められます。さらに投手自身も、リリースポイントがよくわからなくなるリスクもあります。

大きく曲がる変化球は難度が高いので、まずは小さい変化球を覚え、ピッチトンネルを作って打ち取っていきましょう。その際に実践してほしいのは、マウンドで黙々と練習するだけでなく、打者を立たせて反応を確かめることです。自分ではピッチトンネルを作れるようになったと思っても、相手バッターには見極められる可能性もあるからです。投手にとって大事なのは、いかに実戦で抑えるか。そのためにも、本番に近い環境で試してみてください。

出典:『革新的投球パフォーマンス』高島誠

『革新的投球パフォーマンス』
著者:高島誠

「高校生なら誰でも140km/hを投げられるようになる」という命題に明確な回答をする超実践本!近年成長著しい広島県私立武田高校で強化メニューを担当するトレーナーの高島誠の下には、山岡泰輔投手や高橋礼投手というプロの投手たちもシーズンオフにトレーニングにやって来ます。高島はどんな指導をして成長に導いているのか。その考え方や練習&トレーニング方法を写真とQRコードで詳しく解説!

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