ラプソードをどう使うか【中級編】
●ピッチトンネルを複数作ろう
ピッチトンネルを一つ作れるようになったら、次は複数のコースに形成できるようになりましょう。一つのコースばかりに投げていると、相手打者に対応されてしまうからです。
各バッターには得意、不得意なコースがあります。例えば外角高めに強い右打者に対し、外のピッチトンネルを使って投球を組み立てる一方では対応されかねません。そこで外角高めに加えて内角低めにもピッチトンネルを使えれば、打ち取る確率は高まります。
加えて有効なのは、ピッチトンネルから外れる球をうまく活かしていくこと。代表例が山岡投手の縦スライダーや山本投手(ともにオリックス)のカーブです。相手打者はピッチトンネルを通る球種にどうしても意識が強くなり、そこから外れる球は待ちにくい。だからピッチトンネルを形成できている投手にとって、その輪をあえて外す変化球はストライクをとりやすく、カウントを有利にできます。
さらに、ボールからストライクゾーンに曲がる変化球も効果的です。外角のボールゾーンからストライクに入ってくる「バックドア」や、内角のボールゾーンから中にくる「フロントドア」と言われるものです。前者はカットボールやスライダー、スラーブ、パワーカーブ、後者はツーシームやシンカーなどです。
バックドアやフロントドアの変化球とストレートを組み合わせて使えば、配球の幅も増します。例えば右投手が右打者に対し、内角のボールゾーンにストレートを見せおいて、同じような軌道からスライダーを曲げる。相手打者はインサイドのストレートと錯覚し、思わずよけます。ところがそのボールはストライクゾーンに入ってくるので、カウントを稼ぐことができます。
この2球で相手打者は内角への意識が強くなり、次は外角を攻めやすい状況ができます。そこで外のストライクゾーンにカットボールを投げてみましょう。スライダーと同じジャイロ成分が含まれた球種なので、相手には2球目の残像があります。打者は「ボールになる」と思って振りにいくのをやめたら、スライダーほど曲がらずストライクになる。こんな攻め方をできるようになれば、〝勝てる投手〟に大きく近づいているはずです。
出典:『革新的投球パフォーマンス』高島誠
『革新的投球パフォーマンス』
著者:高島誠
「高校生なら誰でも140km/hを投げられるようになる」という命題に明確な回答をする超実践本!近年成長著しい広島県私立武田高校で強化メニューを担当するトレーナーの高島誠の下には、山岡泰輔投手や高橋礼投手というプロの投手たちもシーズンオフにトレーニングにやって来ます。高島はどんな指導をして成長に導いているのか。その考え方や練習&トレーニング方法を写真とQRコードで詳しく解説!
公開日:2022.01.19