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物理から考えるサッカーの話!ボールは堂安律の蹴り方でどんな曲がり方をするんだろう?【すごい物理の話】

Text:望月修

プロサッカー選手のスゴイ技術

2022年サッカー・カタールワールドカップのスペイン戦で、後半開始早々に堂安律選手が放った矢のような同点シュートは、実に鮮烈! ゴールから18m離れたところから水平方向への時速120㎞/hのシュートでした。では、堂安選手がボールをどのようにキックしたのかを、ボール軌道(動画による)から分析してみましょう。

ボールの放物軌道の最高点はゴール(高さ2・44m)の半分程度だったので、最高点hは1・2mとします。そうすると蹴り上げ角度αは8・28°、その角度方向のキック速度Uは121・3㎞/hと計算できます。キックからゴールまでの時間は0.35秒です。堂安選手の左足でボールのどこを蹴ったのか図1中の式をもとに見積もってみましょう。映像から、上からボールを見ると時計方向に回転し、回転角速度ωはゴールするまでに水平面内で2回転(720°=4πrad)するものでした。ということは、回転角速度ωは0・35秒で4πradとなるため、ω=36rad/sと計算できます。

サッカーボールの質量はM=0・43kgなので、これを瞬間的(0・02 秒)に121・3㎞/h(33・7m/s)に加速する力のFは、運動方程式からF=725Nとなります。

直径は22㎝(=0・22m)、半径rはr=0・11 m。これらの情報によって、ボールの進行方向から0・09°左側方向へ上向き8・23°へ蹴り上げたことがわかります。ボールの大きさと球速で、無回転ボールの抵抗係数CDは0・09と見積もれます。この値は通常でのCD値が0・45なのに対して値が小さいため、ほぼ減速することなく飛んでいくはずです。堂安選手のシュートは、ボールに回転が加わると軌道が右にカーブしてゴールポストの外へ飛んでいく可能性がありました。その回転を押さえて蹴ったことが、まさに職人技的なピンポイントの蹴りだったと説明できるのです。

堂安律が蹴ったボールの軌道【眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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