解釈を変えることで矛盾を解消する
自分の心の中に矛盾を抱えた状態のことを「認知的不協和」といいます。これはフェスティンガーによって提唱された理論で、認知的不協和が起きると、人は無意識のうちにそれを解消しようとします。
これについてフェスティンガーは、次のような研究を行っています。ある宗教団体の信者たちは「1954年12月21日に大洪水が発生して世界は滅びるが、自分たちは宇宙人によって助けられる」と信じていました。しかし、当日になってもなにも起きません。
ここで信者たちは、自分の心の中に「予言は必ず実現するはずだが、実際は大洪水も宇宙人も来ていない」という矛盾を抱えることになります。そこで信者たちは「自分たちの信仰心によって神が洪水を防ぎ、世界は救われたのだ」と考えるようになりました。
予言が外れたという事実の解釈を変化させることで、自分の中の矛盾、すなわち認知的不協和を解消したというわけです。
これと同じようなことは喫煙者にもいえます。喫煙者にとって、健康に悪いにも関わらずタバコを吸っているという行為は、自分の中に矛盾を抱えた状態といえます。
これを解消する方法としては、思い切って禁煙するという手もありますが、これはそう簡単にはできません。そこで、「喫煙者でも長寿の人がいる」とか「禁煙するストレスのほうが体に悪い」というふうに考えて、認知的不協和を解消しようとします。
このように人は、自分に都合の良い情報だけを選んだり、解釈をしたりすることで、できるだけ認知的不協和を起こさないようにしているわけです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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監修:亀田達也
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公開日:2023.06.14