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躍動のプロ5年目セットアッパー。千葉ロッテマリーンズ佐々木千隼投手【ラブすぽ独占インタビュー】

Text:花田雪

“2016年ドラフトの目玉”と呼ばれた男が、プロ5年目にしてようやく本領を発揮しつつある。
千葉ロッテマリーンズの背番号11・佐々木千隼――。
度重なる故障に苦しみながら、今季は開幕からリリーバーとして好調をキープ。シーズン途中からはセットアッパーの座を掴み、自身初のオールスターにも出場した。
チームに欠かせない存在となったリリーフエースは、今季の“飛躍”をどう自己分析しているのか。「スーパールーキー」と呼ばれたプロ1年目から現在までの想いも含めて語ってもらった。

理想のフォームは「0から0」
リハビリを経て辿り着いた境地

――プロ5年目の今季は前半戦終了時点で31試合に登板、4勝0敗12ホールド、防御率1.06と素晴らしい数字を残しています。率直に、ここまでを振り返っていかがですか?

佐々木 プロ入りから毎年、ケガが多くて満足に野球が出来ない年が続いていました。今季はここまでケガもなく一軍で投げ続けることができているので、とても充実しています。

――肩やヒジへの不安は、払しょくされている?

佐々木 トレーニングやケアをしっかりとやれているので、それを続けていけば大丈夫かなという感覚はあります。

――そのうえで、今季は数字がしっかりと残せている。その要因をご自身ではどう考えていますか?

佐々木 投球フォームの意識は少し変えましたね。

――大学時やプロ1年目と比較すると、今のフォームは力感がなく、リラックスして投げている印象を受けます。

佐々木 そうですね。そこは一番意識しています。

――どうやって現在のフォームにたどり着いたのでしょう。

佐々木 肩を痛めて、リハビリの段階で力を抜いたほうが肩の動きだったり、可動域が出ることは感じていました。そこから実際に投げていく中で、フォームと(投げる)ボールのギャップが少しでもあった方が打ちづらいのかなと考えるようになったのがキッカケですね。

――力感の無いフォームでも、ボールは「ビュッ!」といくようなイメージ?

佐々木 理想はそうなって欲しいと思っています。

――その理想には近づけている?

佐々木 どうなんですかね……。まだまだだと思います。

――よく、投げる瞬間までは脱力して、リリースの瞬間だけに力を集約させる、という話を聞きます。佐々木投手もそういう感覚で投げている?

佐々木 もっと言えば、「0から100」ではなく最後まで力を入れずに「0から0」で終わりたい。それが理想です。

――「0から0」ですか?

佐々木 0の状態からでも、ボールがしっかりといってくれれば、それが一番だと思うので。腕を振らないでも、ボールはちゃんといく、みたいな感じですかね。

――「フォームとボールのギャップ」は、自身の感覚はもちろん、打者のリアクションなども参考にするのでしょうか。

佐々木 スピードが遅いので、球速の割にバッターが差し込まれてくれたりすると、自分のやりたいことが少しは出来ているのかなと感じますね。

球速への思いはある
だが、とらわれない

――「スピード」でいうと、大学時代は最速153キロ、常時140キロ代後半を計測していました。今は平均で140キロ前後かと思うのですが、「スピードへのこだわり」は今もまだある?

佐々木 やっぱり、スピードはもっと出したいですよ。その思いはずっとあります。ただ、今までよりは(スピードに)とらわれなくなったのかなとも思います。

――スピードに固執しすぎない。

佐々木 これまでは(スピードが)出ないことでネガティブになり過ぎていました。それでおかしくなっていた部分も少なからずあったので。

――「ネガティブ」になっていたのはプロ1年目から?

佐々木 もう、1年目のキャンプの時点からですね。

――今振り返ると、プロ1年目のキャンプで球速が出なくなった要因はどこにあったのでしょう?

佐々木 やはり、メカニクスの部分ですね。大学まではそれこそ感覚だけでやっていて、自分の何がおかしくなっているのかとか、わからないままやり続けていたので。

――プロ生活を続ける中で、そのあたりは改善されてきた?

佐々木 はい。いろいろと勉強させてもらっていますし、あとはそれをいかに自分の身体で表現できるかだと思います。まぁ、表現できていないからスピードも出ないんですけどね(笑)。

――それでも、これからさらにメカニクスの部分や技術的な部分を改善していければ、現在のフォームのままでも球速をさらに上げる手ごたえはある?

佐々木 いや、もっと取り組まないこともありますし、試行錯誤はこれからも続けていきたいですね。

1年目は本当にキツかった
今は少しだけ、気楽に

――開幕当初はビハインドの場面やロングリリーフが主な役割で、徐々に「良い場面」での登板が増えてきました。やはり、緊迫した場面で投げるほうがモチベーションは上がりますか?

佐々木 どんな時でも、なるべくフラットな精神状態でいようとは考えています。ただ、それでも自分の投げるシーンが少しずつ変わってくることで、高ぶるものが出てくるのは確かです。

――今季は6月に入ったあたりから本格的に「セットアッパー」を担っていますが、首脳陣から具体的に「これからは勝ちパターンでいく」みたいな通告はあったのでしょうか。

佐々木 いや……。(しばらく考えてから)たぶん、言われていないですね。あまり憶えていないです、すいません(笑)。

――今季はリリーフで起用されていますが、大学時代もプロ入り当初も先発が主戦場でした。ここから先のプロ生活を見据えた時「先発」へのこだわりはありますか?

佐々木 まったくないですね。一軍で投げることができればどこでもいいです。

――その思いは「今」だから?それともプロ入り当初から?

佐々木 プロに入ったころはずっと先発で使ってもらっていて、それが当たり前だったので、特に意識はしていませんでした。そういう意味では「今」だからですかね。ケガをして、ようやく一軍で投げることができているからこそ、そう感じるのかもしれないです。

――それこそプロ1年目は期待も注目もされて、メディアにも大きく取り上げられた。先ほど、「メカニクスの問題が大きかった」とは仰っていましたが、精神的なキツさはなかったですか?

佐々木 それは、メチャメチャありました。本当にキツかったです(苦笑)。「もう、注目してほしくない」と思うくらい。

――その状況はどうやって乗り越えた?

佐々木 乗り越えたわけではないですけど……。あの頃は自分で自分にプレッシャーをかけすぎて負の連鎖に陥ってしまっていたので。今は少し余裕を持てるようになってきたのかなとは思います。自分が思うほど、他人って自分のことを気にしていないなって思えるようになって、もう少し気楽にやってもいいのかなと。

――これから結果を残し続けると、またルーキー時代のように大きな注目を浴びることになるかもしれません。でも、いまならば受け流せそうですか?

佐々木 受け流すというよりは、ちゃんと向き合う。1年目でいろいろ経験したぶん、わかったこともたくさんあるので。

――今季はオールスターだけでなく東京五輪もあって、例年よりもシーズンの中断期間が長い。この時期はどうやって過ごしていますか?

佐々木 今はちょっと追い込めている時期です。少し落ちている部分なんかも、もう少し鍛えたいかなと思っています。

――体を休めたり、リカバリーするよりも「追い込む」イメージ?

佐々木 そうですね。少しトレーニングを多めにしたり、この中断期間をしっかりと過ごしたいですね。

――最後に、後半戦に向けての抱負をお願いします。

佐々木 まずはケガをしないで1年間やり切りたいです。それが第一。そのうえで、どんな形でもチームの力になって、優勝に貢献したいです。

収録:2021年7月23日
協力:千葉ロッテマリーンズ