井口資仁監督自身が『近い将来、真の4番としてチームを勝利へ導く存在』と大きな期待をかける安田尚憲。昨季途中から1軍の4番に抜擢されたが、今季はスタメン落ち、打順降格という悔しさも味わった。優勝争いまっただ中のチームの中で、22歳の若き大砲候補は、今季これまでをどう振り返るのか――。
昨季より数字は上がっていても
課題は多い。「まだまだ」です
――まずは個人のお話から伺います。今季は開幕から5月下旬までは4番、現在は主に6~7番で起用されています。ここまでを振り返って、手応えや課題があれば教えてください。
安田 1年通してみたとき、好不調の波があるのが今の課題です。スタメンを外れることもあって、悔しい時間も過ごしたので、個人としてはまったく満足できる結果を残せていない。まだまだ頑張らないといけないと思っています。
――とはいえ、数字だけを見ると昨季と比較して打率は大きく向上し、本塁打数はすでに超えています。打点も昨季を上回るペース(※取材時点)ですが、それでも「まだまだ」ですか?
安田 たしかに数字は上がっていますけど、自分が一番意識している「ストレートをしっかりとはじき返す」「強いボールを長打にする」という部分は、自分の中で納得できていません。そういう意味で、やはり「まだまだ」ですね。
――「4番」という打順についても聞かせてください。昨季途中から抜擢され、今季も開幕から5月26日まで4番での起用が続きました。
安田 すごくいいチャンスを頂いたのに、その中で結果を残せなかった。そもそも実力で起用されたわけではないので、実力不足と言えばそれまでですけど、そこに関しても「まだまだ」な部分がありました。今は下位を打つことが多いですけど、そこで結果を残して今度は自分の力で4番を打ちたいという思いはあります。ただ、そのためにも目の前の1打席、1球を大事にしていかないといけない。
――井口資仁監督は今年出版された自著『もう下剋上とは言わせない』(日本文芸社)の中で、安田選手について「近い将来、真の4番打者としてチームを勝利に導く存在」と書かれています。チームの指揮官がここまで明確に、1人の選手に対する具体的な期待を語ることはあまりないと思うのですが、安田選手自身も井口監督のそういった思いは感じますか?
安田 去年、4番で起用していただいた時もそういう期待は感じていました。その経験は得がたいものだし、精神的にしんどい時期もありましたけど、そういう部分も含めて少しは成長できたかなと思います。あとは実力、技術の部分で1軍のエース級のピッチャーを相手にどう戦っていくのか。ここから先は自分次第でどうにでもなる。もう一度、今度は実力で「安田に4番を打ってもらおう」と思ってもらえるような成績を残していきたいです。
――与えられた4番ではなく、自分で掴み取る4番――。
安田 そうですね。そうならないといけないと思っています。
ランナーを還すこと、特に「1点」を
奪うバッティングを意識している
――チームについても伺います。現在、パ・リーグで優勝争いのまっただ中。チーム内の雰囲気の良さなどは感じますか?
安田 チーム一丸となって戦っているというか、選手たちが助け合っていく雰囲気はあります。僕自身はまだ先輩についていくことだけを考えていますけど、特に今季は藤原(恭大)、山口(航輝)といった僕より年下の選手も1軍で試合に出ていますし、そういうところで生まれてしまうミスも先輩方がカバーしてくれる。だからこそ僕らも思い切ったプレーをすることができているなと。すごく、心強いです。
――先日、この「ラブすぽ」でインタビューした荻野貴司選手も「若い力をすごく感じる」と仰っていました。
安田 試合に出る以上は年齢関係なく責任感を持ってプレーしなければいけないですし、ここから先はさらに1試合、1試合が優勝に向けて大事になってくる。だからこそより今まで以上に責任感を持って試合に臨んだり、準備をしなければいけないので、そこはしっかりとやっていきたいですね。自分の成績どうこうではなく、チームの勝利だけを目指してやる――。そういう時期になっていると思います。
――勝利を目指すチームの中で、安田選手はどういう形で貢献したいと考えていますか?
安田 開幕当初からずっと思っていることですけど、ランナーがいるときはそのランナーを還す。特にランナー三塁の場面はゴロや外野フライでも点を取れるケースがあるので、試合状況も含めてしっかりと考えながら「1点を取る」ために必要なバッティングを心がけています。
――ランナーの状況で、バッティングのスタイルや打席でのイメージは変わる?
安田 ランナーがいないときは長打を打てればいいなと思っていますけど、得点圏の場合は少し変わってきますね。センター方向や逆方向への意識も持ちながら、今言った「ランナーを還す」バッティングをイメージしています。
――先ほども名前が挙がりましたが、藤原選手、山口選手、ピッチャーでは佐々木朗希投手など、年下の選手が1軍で活躍しています。彼らは安田選手にとってどういう存在ですか?
安田 刺激ももらいますし、僕も含めてまだまだ経験はないので、そのぶん若手で一丸になって、一緒に頑張っていこうという雰囲気はあります。
マーティンからかけられた言葉は
これからの野球人生でも大事にしたい
――今季ここまで、監督やチームメイトからかけられた言葉で心に残っているものはありますか?
安田 (レオネス)マーティンから「試合中に弱気になるな」「自分に自信を持ってプレーしないとダメだ」ということを、昨季も、今季の初めのころにも言われました。そう言われてはじめて、自分の弱い部分がグラウンドでも出ていたのかなと気づかされました。どれだけ打てなくても、グラウンドに立った以上は自分に自信を持たなければいけない。そういう思いにさせられました。今でもその言葉はしっかりと心にとどめています。
――たとえば5月27日に今季初めてスタメンを外れて、3試合ほどベンチスタートが続きました。そのときもマーティン選手の言葉が力になった?
安田 そうですね。あのときはスタメンを外れるまで4番を打たせてもらっていたんですけど、「チームの4番がそんな弱々しい姿で打席に立つな」ということも言われました。自分でもそう思いましたし、その気持ちはこれから野球人生を続ける中でも、大事にしたいですね。
――これはずっと言われ続けていることだと思いますが、ドラフト同期入団には村上宗隆(ヤクルト)、清宮幸太郎(日本ハム)という安田選手と同じ左のスラッガーがいます。彼らを意識することはありますか。
安田 プロ入りからずっと比較されていますし、1年目はファームでも一緒にやってきて、特に村上が東京五輪にも出てリーグでもあれだけ結果を残しているので刺激は受けます。ただ、自分はやれることをやるだけなので。たまにLINEもしますけど、リーグも違いますし、そこまで強く意識することはないかもしれないです。
――先ほども話に出ましたが、ここから終盤にかけてさらに大事な試合が増えてきます。改めて、チーム、そして個人としての目標を聞かせてください。
安田 まずはリーグ優勝。そこに貢献できるようなプレーをしていきたいです。特にチャンスでしっかりと得点を奪うバッティング、試合を決めるような一本を打てるように頑張ります。
――最後にひとつだけ。読書家としても知られる安田選手ですか、最近読んだ本、オススメの本があれば教えてください。
安田 最近はオードリーの若林正恭さんが書かれたエッセイを3冊一気に読みましたね。面白かったです。
――野球とは全く関係ない本ですね(笑)。
安田 はい、読書はあくまでもリラックスタイムなので(笑)。
――貴重なお話、ありがとうございました!
収録:2021年9月12日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ
公開日:2021.09.22