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千葉ロッテマリーンズ東妻勇輔。失望の2022年を経て飛躍。サブロー2軍監督の言葉がクイック投法のキッカケ【ラブすぽ独占インタビュー】

Text:花田雪

プロ4年目の昨季、一軍登板わずか3試合に終わった東妻勇輔が今季、一軍の舞台で躍動している。5月5日の一軍昇格以降、主に勝ちパターンで起用され続けて、いまやすっかり勝利の方程式入り。悔しい1年を経て進化を遂げた27歳の右腕に、飛躍の理由を聞いた。

“自分に失望”した2022年――
“足首の強化”が飛躍のキッカケ

――今季は5月に一軍昇格を果たしてから好調が続いていますが、まずは昨シーズンについて聞かせてください。プロ4年目で一軍登板がキャリア最少の3試合。自身にとっても悔しいシーズンだったと思います。

東妻 ファームでは結果が出ているのに(※40試合登板で防御率1.07)、上で使ってもらった3試合でまったく結果が出ず、そこから結局一度も登板がなかったという意味では悔しいと同時に、焦りと危機感がすごく出てきたシーズンでした。年齢も上のほうになってきましたし、その前年、2021年はキャリアハイの数字(※37試合登板で防御率2.88)を残せていたので、本来ならさらにステップアップしなきゃいけない年だった。にもかかわらず、ああいう結果に終わって自分への失望感って言うんですかね……。自分自身に期待していたぶん、これくらいは(結果を)残せるだろうと、どこか甘く見過ぎていたのかもしれません。

――そんな1年を終えて迎えた今季。東妻投手の中ではなにかを「変えた」部分はあったのでしょうか。

東妻 昨年まではソフトバンクの森唯斗投手の自主トレに参加させて頂いていたんですが、もう誰かに頼っているようじゃダメだ、自分で考えていかなきゃいけないと思って、森投手の自主トレには参加せず、自分で考えて練習メニューを組みながら自主トレを行いました。ただ、それまでは自分ひとりで練習するということがあまりなかったので、最初は何から始めていいのか、ちょっとむずかしい部分もありましたね。なので、まずはひとつ明確な目標を立てて、それを重点的にやった自主トレでした。

――「明確な目標」とは?

東妻 足首のトレーニングです。踏み出す足の着地の方法やバランス感覚ですね。自分はそこがずれやすくて、昨年も大きな捻挫をしてしまいました。なのでまず、足首の安定性を求めないとコントロールであったり球威の部分も良くならないと感じていたんです。投球動作は片足で立っている時間が長いので、まずはそこを安定させたいと。

――そういった取り組みは今季が初めて?

東妻 そうですね。森投手との自主トレでは走り込んだり、投げ込んだりといった基礎的なトレーニングに重点を置いていて、その意味ではキャンプに入ってもケガはしないし、体力的にも余裕で入っていけるのですごく良かったんですが、自分の中では技術的な部分が足りていなかった。それまでの自主トレが悪かったということではなくて、自分の実力が足りなさ過ぎて、せっかく基礎体力を上げても毎年、同じような成績しか挙げられていないなと感じたんです。

――そういうアプローチが間違っていなかったなと感じられた瞬間はありますか?

東妻 一番はコントロールの安定ですね。ファームの時点でフォアボールの数はもちろんですし、フルカウントから歩かせてしまうシーンが減った感覚はあります。やはり、足首のバランス感覚が良くなったことで思ったところでボールを離せている気がします。

今季初登板のソフトバンク戦
“吐きそうなくらい”緊張

――今季は5月に一軍昇格。ソフトバンク戦での今季初登板がいきなり同点の延長10回という厳しい場面でした。

東妻 自分もああいう場面で出番が来るとは思っていなかったので、投げる前はだいぶ覚悟をしていきましたね。ただ、良い結果(※2イニングを投げて無失点)が出てくれたので、それがその後につながったのかなと思っています。ただ、今思うと吐きそうなくらい緊張はしていました(笑)。

――たとえば投げる前、前年の悪いイメージがよぎったりはしなかったですか?

東妻 それはなかったですね。一軍に上がることが決まった時点で、自分には失うものはなにもない。去年あれだけもがいても一軍に上がれなくて、上がっても結果が出なくて……。そういう部分ではあれより下はもうないと思っていたので。だから、緊張こそしましたけど悪いイメージはなくて、「打たれたら仕方ない」と開き直れたのが良かったのかもしれません。

――最初の登板で結果が出たのは、やはり大きかった。

東妻 めちゃくちゃ大きかったと思います。打たれてシーズンをスタートさせるのと、ああいう場面で抑えられるのとでは全然違っただろうなと。あと、初登板があれだけ緊迫した場面だったのも自分の中では大きかったですね。同点の延長戦だったので、変な話、あれ以上のシチュエーションはほとんどないじゃないですか。だから、どんな場面で投げることになっても「今季最初の登板に比べたら楽な場面」と思えるようにもなりました。

――今季は勝ちパターンでの登板も増えていますが、サヨナラ負けを喫した試合を振り返った際の「1イニングで1点取られただけと割り切る」というコメントが印象的でした。

東妻 2年前くらいから、そういう意識は持つようにしています。特にリリーフは、どんな場面で打たれたかで周りからの印象がすごく変わります。同点の場面で投げてサヨナラ負けするのと、大量リードの場面で1点取られるのでは、同じ1失点でも全然イメージが違う。ただ、投げる側からすれば、どんな場面でも打たれたら悔しいですし、1年間で何十試合と投げるうちの「1失点」なのは同じ。逆にそういうメンタリティじゃないと、毎日投げるリリーフはキツいと思います。

――今季で言えば6月18日のDeNA戦で1回2失点のあと、23日の日本ハム戦でも本塁打を打たれて1回1失点。それでも翌24日に登板して1回を3奪三振無失点。2試合続けて失点した直後に登板機会が回ってくるケースもありました。

東妻 ああいう試合はまさに「切り替え」が大切になります。個人的には、打たれた試合のすぐ後に登板機会をもらえるのはすごくありがたいですね。やはり悪いイメージを持ったままにするよりは、すぐに取り返すチャンスがあった方がやりやすい。あの試合では前日にホームランを打たれた野村佑希選手とも対戦機会があって「絶対に三振取ってやる」という気持ちで臨みました。

――打たれた打者との再戦は、やはり気合も入りますか。

東妻 あまり意識しないようにとは思ってるんですけど、どうしても気持ちは出てしまいますね。そういう時は、むしろ打たれたボールから入るケースもあります。相手も、まさか直前に打ったボールが来るとは思っていないだろうから逆を突くイメージです。

“クイック投法”のキッカケは
サブロー監督のアドバイス

――今季のスタッツを見ると三振の数も増えています。

東妻 「増えたな」という実感はあるんですけど、自分の中ではまだ明確な理由は見えていません。ただ、見逃し三振を取れるケースが増えているので、良いコースに投げられているのと、クイックでタイミングが取れないからバッターもバットが出ないのかな……とは思います。

――そのクイックについても伺いたいと思っていました。今季からランナーがいない場面でもクイックで投球するようになりました。キッカケはなんだったのでしょう?

東妻 ファームでのDeNA戦でサヨナラ負けをくらった試合があったんですけど、試合後にサブロー監督から呼び出されて「全部クイックで投げてみろよ」と言われたんです。おそらく、監督も打者目線でアドバイスをくれたんだと思うんですけど「お前のクイックは速いから、タイミングが取りにくいと思う」と。その直後に一軍に呼ばれたので、ぶっつけでクイックを試してみたらハマった、という感じです。

――じゃあクイックを試したのは一軍の試合が初めて?

東妻 そうです。(ファームで)サヨナラ負けした試合のあとに一軍に呼ばれたので。ただ、もともとランナーがいる場面ではクイックで投げていましたし、そこまで違和感なく投げられています。

――クイックの場合、どうしても球速が落ちるケースがあると思います。そのあたりは気になりませんでしたか

東妻 球速はたしかに落ちます。足を上げて投げれば150キロ近く出るんですけど、クイックだと140キロ台中盤くらい。でも、そのぶんをフォームで差し込めるのであれば別にいいかなと。1年目は足を上げて155キロが出ましたけど、プロの真っすぐに強いバッターは簡単にホームランにしてくるので。どんなに速いボールでもタイミングが合えば打たれるし、それだったらクイックを使って間合いをずらしたり、たまに足を上げて投げることでタイミングを取りにくくしたり、そうやって惑わせることもできます。

――今季はまだ半分が終わった段階ですが、キャリアハイの数字も見えてきていると思います。

東妻 あまり、遠くの目標は見ないようにしています。長いシーズンなので、調子の良い悪いもありますし、もっというと調子が良いから抑えられて、悪いから打たれるとも限らない。相手があることなので、相性だったり、相手の調子によって結果は左右されます。

――「打たれる、打たれない」と調子の「良い、悪い」は必ずしもリンクしない。

東妻 その通りです。だから結果に対して一喜一憂するのはやめようと。そこだけは最初から決めています。気持ちの浮き沈みをなくして、たとえ打たれた試合が続いてもメンタルは一定に保つ。そうやって目の前の試合だけに集中して、最終的に「あ、最後まで一軍で投げることができたな」と思えるようなシーズンになればいいなと思っています。

――後半戦の活躍も期待しています。ありがとうございました!

収録:2023年7月4日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ

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