千葉ロッテマリーンズの高卒4年目セットアッパー、横山陸人。今季30試合以上に登板し、パ・リーグ全球団からホールドを上げるなど飛躍著しい右腕に、成長の理由と今後の抱負を聞いた。
「自分を大谷翔平だと思え」同僚助っ人のアドバイスを胸に
――プロ4年目の今季、7月にはプロ初勝利、初セーブ、初ホールドも記録しました。どの記録もうれしかったと思いますが、特に印象深いのはどのシーンですか?
横山 やっぱり初セーブですね。自分の目標としているポジションがクローザーですし、セーブは抑え投手にしか付かない記録なので。その目標に向けての第一歩じゃないですけど、「一番」と言われたらセーブだと思います。
――あの試合はクローザーの益田直也投手の連投を避ける意味合いもありました。セーブシチュエーションでの登板だということは、投げる前から意識していた?
横山 セーブがつくことは分かっていました。ただ、それ以上に1点差だったので例えば一発でも同点にされてしまう。その意味ですごく緊張感も持ってマウンドに上がりました。
――今季はここまでキャリアハイの数字を残しています。結果が出ている理由を自分ではどう感じていますか?
横山 一番自信がある真っすぐはもちろんですけど、今年はそれだけでなくシンカーやスライダーでしっかりと空振りを取れている。それが、真っすぐを生かすことにもつながっていると感じています。
――開幕直後に一軍に上がって、2試合連続で失点。その後、一度ファームに落ちるという経験をされました。あの経験も、今季の投球に生きている?
横山 最初の2試合でいきなり打たれたことで、反省点を見つけることができました。最初に(一軍に)上がったときは気持ちが上がりすぎてしまって、とにかく球の勢いだけで抑えてやろう、という感じで投げてしまったなと。そういう部分をファームではもう一度考え直して、緊張感のある場面で試させて頂きながら自分の投球を改めて考えることが出来ました。
――シンカーとスライダーが良くなった、ということですが、オフから取り組んでいたことだったのでしょうか。
横山 プロに入ってから課題は変化球だとずっと思っていました。自主トレを益田さんと一緒にやらせて頂いて、(変化球の)感覚だったり、狙うポイントの話などもさせて頂きながら、少しずつ良くなってきたのかなと思います……まだまだですけど(笑)。
――6月に一軍に再昇格してからは色々な場面で投げていますが、ファームで過ごす一年と一軍で過ごす一年は違いますか?
横山 やっぱり緊張感が全然違うなと感じています。打者のレベルも高いですし、もし打たれたとしても次の日にすぐ投げる可能性があるので気持ちを切り替える必要もあります。そういう部分も、すごく「大変だな」と思います。
――気持ちの「切り替え」は得意なほうですか?
横山 実はあまり得意じゃないんです。ただ、シーズン中の札幌遠征で「中継ぎ会」があって、その場でペルドモから「お前はもっと自信を持っていいんだ。自分が大谷翔平だと思って投げるくらいの気持ちで、もし打たれても次の日は次の日なんだから」とアドバイスをもらったんです。その言葉を胸に刻んで投げています。
佐々木朗希、佐藤都志也、髙部瑛斗……ドラフト同期の活躍は「悔しかった」
――高卒でプロ入りして今季で4年目。一軍での出番も増えて、良い形でプロにも順応できているのかなと思うのですが、横山投手はプロ入りした際、3年後、4年後の今というのは想像できていましたか?
横山 全然できていませんでした。1年目はファームでもけっこう打たれましたし、2年目は一軍で少し投げさせていただいたんですけど、3年目は1試合しか登板できませんでした。正直、去年の段階ではこのまま2、3年くらいでクビになってしまうのかな……という思いもありました。
――昨季が終わった時点では「危機感」があった?
横山 たとえば種市(篤暉)さんは高卒3年目でしっかり結果を残しています。僕自身も昨季は同じ3年目で、「今年はやるぞ」という気持ちで臨んだんですけど結果が出なかった。本当に、悔しかったです。
――ドラフトの同期入団組には佐々木朗希投手、佐藤都志也選手、髙部瑛斗選手と、早い段階から一軍の主力として活躍する選手が多い。そういう「同期の活躍」も気になったのでは?
横山 めちゃくちゃ悔しかったです。髙部さんも去年すごく活躍して、都志也さんも毎年一軍で試合に出ていますし、朗希も去年は完全試合をやって……本当に「自分だけが」という思いが去年は強かったです。
――中でも佐々木投手はドラフト同期であり、チームでは唯一の同級生。やはり意識はしますか?
横山 多少は意識しますが、正直ちょっと「別格」という部分もあるので。その意味では同い年ですけど手本にさせてもらったり、いろいろ学ぼうという気持ちのほうが強いですね。年齢も同じで聞きやすいですし。
クローザーを目指し任された場面をゼロで
――横山投手の特徴として、やはり腕の高さ。いわゆる「サイドスロー」という部分がフォーカスされますが、そのあたりは自分でどう感じていますか?
横山 実は、自分の中ではけっこう「上から」投げているつもりなんです。ただ、映像で見ると「あ、サイドスローだな」と(笑)。自分の中では投げやすい高さで投げていて、結果的にそれが少し横からになっている感覚です。
――ただ、あのアングルから150キロ以上のボールを投げられるのはすごい強みですよね?
横山 自分でもプロに入ったときは154キロ、155キロのボールを投げられるようになるとは思っていませんでした。その意味ではサイドスローからの150キロを超えるボールというのは自分の武器になっていると感じます。
――現在ではラプソードやトラックマンといった機器を使って投球のあらゆる要素が数値化されるようになりました。横山投手はそういった「数字」を見るのは好きですか?
横山 プロに入ってから好きになりました。1年目は球速くらいしか見ていなかったんですけど、NEOREBASEの内田聖人さんに指導を受ける機会があって、いろいろと教えて頂くうちに回転数、回転効率、回転軸といったものにも興味がわいてきました。
――特に気にしている指標はなんですか?
横山 縦変化、いわゆるホップ成分ですね。僕は横から投げるのでオーバースローの投手に比べるとそこまでホップ成分は出ないんですけど、サイドスローの中では高い数字が出るようになりたいと考えています。ストレートで言うとシュートしながらホップするイメージです。
――今季は一軍のバッターとの対戦も増えていますが、プロで「すごいな」と思ったバッターはいますか?
横山 ソフトバンクの柳田(悠岐)さんです。去年、ホームランを打たれて、今年も初セーブの試合で対戦したんですけどヒットを打たれて。対戦成績はたぶん2打数2安打で一度も抑えていません。次に対戦するときには抑えられるよう、三振を奪えるように頑張りたいです。
――まだシーズン中でこれからも優勝争い、ポストシーズン争いと続いていきますが、横山投手から見てマリーンズの一軍の雰囲気はどう感じますか?
横山 ピッチャーで言うと益田さんや、今は少しチームを離れてしまっていますが澤村(拓一)さんが中心になって僕ら若手を盛り上げてくれるので、本当に良い雰囲気だと思っています。
――そんなマリーンズというチームの中で、横山投手は将来どんなピッチャーになりたいと考えていますか?
横山 最初に言ったように、やはりクローザーを目指しているので目標とするピッチャーは益田さんです。今はまだ、足元にも及びませんがいつかは追い抜いて、追い越さなければいけない人だと思っています。そのためにもまずは今季、任された場面で自分のボールをしっかり投げて、アウト3つをしっかり獲ってゼロに抑える。そこを目標にやっていきたいと思います。
――ありがとうございます!今後の活躍も期待しています!
収録:2023年8月30日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ
公開日:2023.09.09