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「スターとファンが試合後に立食パーティ」日本代表キャプテン土井レミイ杏利が語るハンドボール独特の魅力とは?

Text:花田雪

ハンドボール日本代表キャプテン、土井レミイ杏利。またの名を「レミたん」。フランス人の父と日本人の母の間に生まれた彼は、東京五輪を間近に控えた現役アスリートであり、また230万人という破格のフォロワーを抱える人気TikTokerでもある。そんな土井レミイ杏利に、日本ハンドボール界への想いを聞いた。(インタビュー:2021年5月17日)

リーグ戦はYouTubeで全試合が配信

――ハンドボール日本代表の世界での立ち位置は?

急成長中のチームですね。ここ数年、すごい勢いで成長していて、世界的の強豪国が相手でもしっかりと準備さえできればいい勝負ができるだけの実力はあると思っています。

――今年1月に開催された世界選手権の結果(12大会ぶりに予選ラウンドを突破し、最終順位は19位)も、その自信につながっていますか?

目に見えて結果が出ているので、それは(世界での立ち位置を見るうえでの)参考になると思います。

――土井選手が日本に帰ってきてからの2年間で、日本のハンドボールは変わってきていると感じますか。

少しずつですが、「変わろうとしている」という感じですね。これからというときにコロナ禍があって、少しブレーキがかかってしまった部分はありますけど、間違いなく変化はしています。

――その変化を、具体的に言うと?

たとえばSNSなど、今までとは違った形で情報発信をしています。リーグ戦もYouTubeで全試合が配信されて、誰でも無料で観られるようになっています。

フランスリーグとの違い

――土井選手自身もTikTokで230万人のフォロワーを抱えるなど、とても発信力の強い立場にあります。やはり今の時代、SNSの活用は必要なことだと思いますか?

競技によると思いますけど、少なくともハンドボール界には必要だと思います。野球やサッカーなど、すでに人気の高いスポーツはテレビという媒体で毎日のようにニュースになるし、そこまでSNSを活用する必要性はないかもしれません。もちろん、SNSを通じて今までにはない側面をアピールできることもありますけど、我々ほど(絶対に必要だというわけ)ではないですよね。

――やはり「知ってもらう」「見てもらう」ことはハンドボール界、さらには選手個人にとっても良い影響を与える?

「良い影響」かは団体や個人によると思うんですけど……(笑)。やはり「知ってもらう」ことはすごく価値のあることです。誰も知らないところで世界チャンピオンになっても、意味がない。知ってもらうことが、(競技、選手としての)価値を高めることになる。

――土井選手は大学卒業後から2018年まで、ハンドボール人気の高いフランスでプレーされていました。やはり日本とは人気や知名度の差を感じますか

野球で言えばプロ野球と草野球くらいの差があると思います。(2019年に)初めて日本の実業団チームでプレーしたときには結構ショックを受けました。フランスにいたころは、黙っていてもお客さんが来てくれるので、ハンドボールのことだけを考えればよかったんです。でも、日本ではどうすればお客さんが集まるのか、どうすれば競技の人気が高まるのかを考えなければいけない。ただ、僕が帰国した時点ではそれを本気で変えようとしている人は一人もいなかった。なので、「自分でやろう」と決心したんです。

ハンドボールの魅力さえ知ってもらえれば、もっと人気も出るし、もっとフィーチャーされる自信がある。

自信もありますし、その可能性は十分あると思います。実際に会場に足を運んでもらって試合を見てもらえれば、ハンドボールを楽しいと感じてくれる人は多いんじゃないかなと。

――そこで今はやはり、多くの人に「見てもらう」努力をする段階にある。

興味を持ってもらうきっかけですよね。たとえば、映画の宣伝もそうじゃないですか。映画館に足を運んでもらうためにはまず、その映画が上映されているよということを告知しないといけない。そこに興味を持ってもらえるようなアプローチの仕方が必要なんです。

――TikTokでの発信もその延長線上にある。

TikTokの影響はすごく大きいですね。コロナ禍が明けたら、絶対に見に行きますと言ってくれる方も本当に多いです。

試合後にスターと立食パーティ

――「理想的だな」と感じる他競技はありますか?

競技ではあまりないですね。ハンドボールってちょっと独特だったりするんですよ。ヨーロッパではすごく人気があるんですけど、スーパースターがいるチームでも、試合後に立食パーティーをするんです。選手たちはそれにユニフォーム姿で参加して、チケットを買ったファンと触れ合う場があるんです。サッカーで言えばメッシやクリスティアーノ・ロナウド級の選手でも、そのパーティーには参加する。ファンとの距離がすごく近いんです。そういうハンドボール独自の文化を日本でも追及していきたいなとは思いますね。

――ファンはうれしいですよね。

立食パーティーの参加には別でチケットが必要なんですけど、それを買えなかった人のために、会場の出口でサイン会をすることもフランスではよく見る光景です。来て下さった人全員にファンサービスできる……。そういうハンドボールの良い部分を少しでもアピールしていきたいです。

――最後に、読者のみなさんにハンドボールの魅力を教えてください。

ハンドボールは「空中の格闘技」と言われているんですけど、速い展開から激しいぶつかり合いがあって、ジャンプをしてシュートを打つ際のキーパーとの駆け引き。そこが一番の魅力だし、みなさんに見てほしい部分ですね。

写真提供:Yukihito TAGUCHI / JHA