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なぜ春先に花粉症になるのか?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】

Text:稲垣栄洋

Q なぜ春先に花粉症になるのか?

A 花粉の形はウィルスそっくりで、アレルゲンもあるから

花粉症はスギやヒノキなどの風媒花の植物の花粉が原因となることが多いです。風に頼った花粉の飛散は、植物の子孫繁栄戦略の原始的な方法です。

スギの学名は、クリプトメリア・ジャポニカで、「種子が花の苞(鱗片)に隠れているニホンスギ」という意味です。「隠された日本の財産」ともよばれ、日本固有の常緑針葉樹です。

屋久や秋田天然杉など、さまざまなよび方がありますが、種類が異なるのではなく、これらはその地域にちなんで名づけられた名前です。スギの大きな特徴は、病気に強く成長スピードも速いことです。そのため、住宅需要の増加によって、全国でスギが大量に植林されました。

林野庁によると、1960年、貿易自由化政策によって木材の輸入自由化が実施され、自給率は、2002年には約18%と過去最低となりました。

一方、定期的な伐採などがされないスギ林は、さまざまな問題を引き起こしてきました。その代表が「スギ花粉症」です。春先に大量にスギの花が咲き、風媒花のスギは、花粉が風によって遠くまで運ばれてしまい、1980年代以降「スギ花粉症」が増加してきました。

スギの花粉が体内に入るとアレルギー症状が起きます。これはスギ花粉に含まれる「アレルゲン」物質に対し、体内の免疫細胞が外敵と認識して追い出そうとするためで、苦しい症状となります。スギ花粉は、大きさがウィルスとは違っても、形が似ている異物なので、免疫細胞が花粉を外敵と判断するのは当然かもしれません。しかしたとえばインフルエンザウィルスは、体内に入ると数日でどんどん増殖しますが、体内に入った花粉は、ウィルスのように増殖はしません。

1 花粉症のメカニズム

花粉症の救世主?

現在、スギを品種改良した「はるよこい」、「爽春」、「立山 森の輝き」などの無花粉スギが実験、植林されている。花粉症に悩めるすべての日本人にとって、希望の星となるかもしれない。

① 花粉が侵入 抗体がつくられる
② 体内の免疫細胞は花粉を外敵となる異物と認識し、攻撃する
③ さらに花粉が侵入 アレルギー反応=花粉が後退と結びつき、反応の連鎖を引き起こす

2 他人のそら似? 花粉とウイルス

似ているといっても、大きさは違う。左のウィルスはおおよそ1万分の1mm、右の花粉はおおよそ100分の1mmと約100倍の差がある。ウィルスはDNAがどんどん変化するから、対応が難しい。

この見た目がすごい

花粉の電子顕微鏡写真をよく見ると、形はインフルエンザウイルスとそっくりだ。ウィルスは花粉の約100分の1と大きさは違うが、何らかの症状が出て人を苦しめるところは同じ。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋


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監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
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