Q どうやって天敵の攻撃から身を守る?
A アメとムチを使い分けるしたたかな戦術
植物は、暑さ寒さだけでなく、常に動物や害虫の脅威にもさらされています。動物や害虫も生きるため、植物をエサとして攻撃してきます。しかし、植物の側も、毒やトゲ、食べたらひどい味がすることなどで身を守っています。
たとえば、観賞用に家庭でもよく栽培されているカルミア・ラティフォリアという美しい花には、ときに人を死なせるほどの猛毒があります。
トリカブト、クレマチス、アネモネなどをはじめとするキンポウゲ科の花は、見た目はとても美しいのですが、アルカロイド系の毒をもつものが多くあります。もっとも、なかには漢方薬などの医薬品の原材料になる花もありますので、毒と薬は表裏の関係にあるともいえます。
また、大きなトゲをアリの住みかとして提供し、そのアリによってほかの昆虫の攻撃から身を守るアカシアは、アリを奴隷として飼いならして身を守ります(奴隷化については異論もあります)。アカシアの樹液をなめたアリは、その樹液に対する依存症となり、結局、アカシアの奴隷となり、番人となります。
身近な例では、ソメイヨシノなどバラ科のサクラ属の植物は、葉の基部に「花外蜜腺」とよばれる丸い突起があり、それを特定のアリになめさせます。アリは自分のテリトリーを守ろうとする習性がありますから、ほかの害虫はやってきません。
イネ科の植物の長い葉の縁には、目に見えない小さなナイフがずらっと並んでいます。動物がこの葉を食べようと引っ張ると、傷がついてしまうというワナです。さらにイラクサは葉柄などに毒の入った注射針のようなトゲをもっています。動物が葉を食べたら苦しむことになります。このように植物が身を守る手段は、じつにユニークで多彩です。
アカシアの樹液で、アリを番人に
樹液をなめたアリ アカシアの樹液に対する依存症になる
依存症になったアリ アカシアのトゲに住み着き、害虫を排除
アカシアとアリのこうした関係は、一般には「共生」とよばれる。
このサバイバル術がすごい!
植物は虫による食害の危険に、あの手この手で対応する。毒やトゲで身を守る植物は多い。アリを樹液で番人にしてトゲに住まわせる植物も。花外蜜腺のある植物は、アリ以外の虫から身を守る。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
シリーズ累計300万部突破の大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場!
色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説。
図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。
読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。
「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、
一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。
監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
植物たちの巧みな戦略とたくましい生き様が見える一冊です。
公開日:2025.02.15
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