Q 昼に光合成ができない環境ではどうする?
A 夜に二酸化炭素を吸い、昼間はそれを使って光合成する植物も
乾燥した砂漠には、体内に水分を大量に蓄えているベンケイソウやサボテン、アロエなど、さまざまな多肉植物が生きています。また、みずみずしい果実をつけるパイナップルは、熱帯のやせた酸性土壌や乾燥した環境でよく育つ植物です。これらはすべてCAM植物とよばれていて、ちょっと変わった光合成をする植物たちです。
CAM植物のCAMとは、「ベンケイソウ型有機酸代謝」を英語で表した頭文字からきています。
砂漠のような乾燥して暑い気候の中では、昼間に葉の気孔を開いて二酸化炭素を取り込もうとすると、その気孔から、水分がどんどん蒸発し、せっかく蓄えた水分を大量に失いかねません。昼間に二酸化炭素を取り込めないとなると、昼間は光合成ができないかというと、そうではありません。光合成の大切な目的は、取り込んだ二酸化炭素を光合成によって固定して、糖などの栄養分をつくることでした。
CAM植物は、水分が失われる恐れのない夜に気孔を開いて、二酸化炭素を取り込んでおきます。そして「リンゴ酸」を合成し、細胞内の「液胞」というところに蓄えておきます。昼間になったら、気孔をしっかり閉めて、細胞の液胞に蓄えておいたリンゴ酸を分解して二酸化炭素に戻し、葉緑体のカルビン・ベンソン回路で二酸化炭素を固定して光合成を行います。これを「CAM型光合成」といいます。
CAM型光合成を行う植物は、コケ植物を除く維管束を持つ植物全体の約6%を占めるとされ、水分が失われやすい厳しい環境で生きています。
CAM植物は、夜と昼を使い分け、2日間にわたる時間差で光合成をしています。そのため、光合成の進み方が遅くなり、成長も遅くなります。
暑い日中、優雅に優雅に仕事をこなすテク
CAM植物(アロエやサボテン、パイナップルなど)は、水分の蒸発を防ぐため、昼間は気孔を閉じ、涼しい夜間に二酸化炭素を吸収して蓄え、昼間に取り出して太陽光で光合成を行う。
時間差で光合成を成功させる
すごい!光エネルギー
砂漠のサボテンなどや水分ストレスの大きな環境に生息する植物に多く見られるCAM型光合成。夜CO2を吸ってリンゴ酸を作り、昼間それをCO2に戻すのが特徴。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
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「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
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「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、
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監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
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公開日:2025.02.28
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