自然界の法則を知らなければ勝ちかたがわからない
軍隊の形は水を手本とする。水は高いところから低いところへと流れる。これと同じように軍隊も敵の守りの強固なところは避け、手薄なところを強襲すれば勝利を得ることができる。水が地形に従って流れを決めるように、軍隊も敵の態勢によって攻撃地点を決めるのである。
軍隊のありかたはそのときの状況に応じて変化するのである。万物は木・火・土・金・水の五大要素(五行)からなり、木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は木に勝つとされ、これを五行相剋説と称されるように、この世には常に勝つ要素は存在しない。
春夏秋冬の四季にも永遠に続くものはなく、日照時間にも長い時期と短い時期があり、月にも満ち欠けがある。軍のありかたもそれらといっしょで常に一定であることはなく、一定であってはいけないのである。
この道理がわからない指揮官はたまたま勝つことはあっても、大事な戦争では必ず負ける。戦争とは水ものであり、何から何まで同じものはなく、一戦一戦どこかが違っている。
その現実を無視し、前にこのやりかたで勝ったから今回も、というのは無為無策に等しく、全軍を死地に追いやることになりかねない。戦うときは一瞬も思考をやめてはならないのである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.31