絶世の美女に溺れ、祖国を裏切ったアントニウスをオクタヴィアヌスが討つ。
共和制ローマに終止符を打ち、帝政ローマに移行するきっかけになったのは、二度にわたるローマ軍のエジプト遠征だった。最初は前44年、カエサル(シーザー)が「終身独裁官」としてエジプト遠征を行ったときである。事実上の元首としてローマ軍を率いて遠征している。
しかし帰国後、カエサルは暗殺されてしまったので、新たにカエサルの養子オクタヴィアヌスとカエサル腹心のアントニウス、そして、レピドゥスから成る「国家再建三人委員会」が組織されたのであるが、それぞれ統治する属州の富と軍団を奪い合うだけであった。
勇猛な武将であったアントニウスは、エジプトの富と女王クレオパトラの魅力の虜となったのが命取りとなった。エジプトの動きに不信感を抱いていたローマ元老院は一致してオクタヴィアヌスを支持。支持を受けて、オクタヴィアヌスはクレオパトラに宣戦布告する。
前31年、アクティウムの海戦でアントニウス連合艦隊を撃破するが、深追いをせず、一旦ローマに引き上げた後、足場固めをして陣形を整え、再びエジプト攻略に向かう。アントニウスとクレオパトラは自殺。名門プトレマイオス朝エジプトは滅亡し、ローマの属領となった。
前27年、勝利の凱旋するオクタヴィアヌスに対し、ローマ元老院は最大限の敬意を払い、「アウグストゥス(尊厳者)」の尊称を授ける。これによって、彼は国家の「第一人者(プリンケプス)」、すなわち、元首となり、ローマを帝政国家へ導くことになるのである。
以後、ローマ帝国の長い歴史が始まる。それはヨーロッパの歴史そのものとなる。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
昭和22年6月、山形県天童市に生を受ける。法政大学第一文学部中退。地理学、史学専攻。高校が電子工業高校だったためか、理工系的発想で史学を論じる。手始めに佐治芳彦氏と共に「超古代文化論」で縄文文化論を再構成し、独自のピラミッド研究から環太平洋学会に所属して黒又山(秋田県)の総合調査を実施する。以後、環太平洋諸国諸地域を踏査。G・ハンコック氏と共に与那国島(沖縄県)の海底遺跡調査。新発見で話題となる。本業の歴史ノンフイクション作家として、「歴史群像」(学研)創刊に携わって以来、「歴史読本」(新人物往来社)、「歴史街道」(PHP)、「歴史法廷」(世界文化社)、「歴史eye」(日本文芸社)で精力的に執筆、活躍し、『うつけ信長』で「第1回歴史群像大賞」を受賞。「面白いほどよくわかる」シリーズ『日本史』『世界史』『戦国史』『古代日本史』はロングセラーとなる(すべて日本文芸社)。他に『明治維新とは何だったのか?』(日本時事評論社)、『本間光丘』(ダイヤモンド社)など著書多数。歴史コメンテーターとして各種テレビ番組にも出演。幅広い知識と広い視野に立った史論が度々話題となる。NPO法人八潮ハーモニー理事長として地域文化活動でも活躍中。行動する歴史作家である。
いま地球規模の「人類史」という観点からも注目され、一方で一般教養、知識としても人気が高い「世界史」。世界規模の歴史を学ぶ上で大切なのは、歴史を流れとして捉えること、歴史にも原因と結果があり「なぜ」そこに至ることになったのか大もとの理由を理解すること、そして見ただけで忘れないようにビジュアルで視覚的覚えること。本書ではさらにアジアや日本の歴史とその役割にも重点を置き、最新の発見や新しい史論を取り入れた、世界史の学び直しにも、入門にも最適な知的好奇心を満足させる1冊。
公開日:2021.11.24