うれし涙と悔し涙の味が違う不思議
「涙」は上まぶたの外側にある「涙腺」でつくられます。涙腺のまわりの毛細血管から溢れ出た血液の中で「血球(赤血球・白血球・血小板)」が涙腺を通れず、液体成分である血しょうだけが滲み出たものです。
実は鼻の粘膜から分泌される鼻水も同じ成分の血しょうなのです。涙と鼻水が無色透明なのは、血液を赤く見せている赤血球がないためで、血球以外の成分はほとんど血液と同じことから〝赤くない血液〟ともいえます。
鼻水は鼻粘膜にある鼻腺という穴から出る粘液と血管からの浸出液(血しょう)で、風邪のウイルスやアレルギーのアレルゲンなどの異物をキャッチすると脳から「異物を追い出せ」という命令が出され、大量に出るのです。
目と鼻は鼻涙管という管でつながっており、泣くと鼻水が出るのは、涙が涙点という穴に吸収しきれななり、鼻水となって鼻から出るからです。
涙には、乾燥を防いで異物から目を守り、まばたきによって血液に変わって目の表面に酸素や栄養を送る「基本分泌」のほか、ゴミが入ったときや玉ねぎを切ったときなどに反射的に流れる「反射性分泌」、悲しいときやうれしいときに出る「情動性分泌」の3種類があり、感情によって涙の味が変わることが知られています。
たとえば、怒りや悔くやしさなどで興奮し、交感神経が優位に働いているときの涙はナトリウムを多く含むために「しょっぱい」涙になり、うれしいときや悲しいときの涙は副交感神経が優位に働いているため、水っぽく甘い感じがする、といいます。
熱が出るときに寒気がして体が震えるのは、筋肉を震えさせて熱を生み出すためです。ウイルスが強いほど体温を上げて免疫力を高めようとするため、風邪よりもインフルエンザのほうが高熱になります。
また、悲しいときや感動したときに流れる涙には、ストレスホルモンとも呼ばれる「コルチゾール」を一緒に体外に排出してくれます。だから泣いてスッキリするのです。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2021.10.28