肺に空気が流れ込んだり、押し出されたり
肺はみずからの力でふくらんだり縮んだりして、空気を吸い込んで、吐いていると誤解されがちですが、実はそうではありません。その点、自分の力で拍動(はくどう)することができる心臓とは、事情が違います。肺そのものにみずからふくらむ力はないので、胸とお腹の境目にある横隔膜(おうかくまく)という筋肉と、肋ろっ骨(ろっこつ)の間にある肋間筋(ろっかんきん)の力を借りています。
息を吸うときは、肋間筋が縮んで肋骨が上に引き上げられ、それと同時に胸とお腹を隔てている横隔膜が下がり、肋骨内の空間が広がります。それで肋骨内の圧力が下がり、ふくらんだ肺のなかに空気が流れ込みます。
息を吐き出すときは、伸びた肺が自分の弾力性によって元に戻ろうとすることで、肺のなかの空気が外へ押し出されます。肺が空気を吐き出して小さくなるのに合わせ、肋骨が下がると、横隔膜が上がって胸きょう郭かくが縮み、肺のなかの空気が押し出されます。これが、呼吸のしくみです。
吸った空気の3分の1は使われていない
左肺(さはい)は右肺(うはい)より小さく、形も異なります。その理由は心臓が左側にやや張り出しているため。重さは右肺が約600グラム、左肺が約500グラム。肺の容量は左右合わせ2リットル強で、1回の呼吸で空気を出し入れしている量は500ミリリットル程度です。
ただし、吸った空気のすべてをガス交換に使えるわけではありません。なぜなら、吸い込む空気の3分の1は、1つ前の呼吸で完全に吐き出せずに気道に残った使用済みの空気だからです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 解剖学の話』
著:坂井建雄 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
順天堂大学保健医療学部特任教授、日本医史学会理事長。1953 年、大阪府生まれ。1978 年、東京大学医学部卒業後、ドイツのハイデルベルグ大学に留学。帰国後、東京大学医学部助教授、順天堂大学医学部教授を歴任。医学博士。専門は解剖学、細胞生物学、医学史。専門書だけでなく一般向け書籍まで、著書、監修書を多数刊行。近著書は、『医学全史』(ちくま新書)、『図説医学の歴史』(医学書院)など。
ヒトの骨は全部で何個あるの? 血管の長さって、どれくらいあるの? 女性と男性で呼吸法が違うって、ほんとう? いちばん身近でディープ! ヒトの体のナゾを徹底解明! 専門的知識ゼロでOK! 骨、筋肉、肺、心臓、腸、脳……。超素朴な疑問で楽しむ解剖学のキホン。いま、解剖学は医療職やスポーツ関係者だけでなく、健康や体に対する意識の高い人を中心に広く一般に関心が高まっています。解剖学は、人体を切り開き、ヒトの体のしくみと働きを追求する学問。そんな解剖学と解剖学から発展した生理学をベースに、いちばん身近でディープな人体の謎を、ゆるくて楽しいイラストとともにわかりやすく解説します。専門的知識ゼロでも大丈夫。素朴な疑問形式で、骨や筋肉、関節から、呼吸器、循環器、消化器、呼吸器、感覚器、生殖器まで、知っておきたい体のコトが楽しくわかります。日常生活にも役立ち、楽しさ満載の図解本。監修は、解剖学の第一人者の坂井建雄先生です。 ヒトの骨は全部で何個あるの? 血管の長さって、どれくらいあるの? 女性と男性で呼吸法が違うって、ほんとう? いちばん身近でディープ! ヒトの体のナゾを徹底解明! 専門的知識ゼロでOK! 骨、筋肉、肺、心臓、腸、脳……。超素朴な疑問で楽しむ解剖学のキホン。いま、解剖学は医療職やスポーツ関係者だけでなく、健康や体に対する意識の高い人を中心に広く一般に関心が高まっています。解剖学は、人体を切り開き、ヒトの体のしくみと働きを追求する学問。そんな解剖学と解剖学から発展した生理学をベースに、いちばん身近でディープな人体の謎を、ゆるくて楽しいイラストとともにわかりやすく解説します。専門的知識ゼロでも大丈夫。素朴な疑問形式で、骨や筋肉、関節から、呼吸器、循環器、消化器、呼吸器、感覚器、生殖器まで、知っておきたい体のコトが楽しくわかります。日常生活にも役立ち、楽しさ満載の図解本。監修は、解剖学の第一人者の坂井建雄先生です。
公開日:2021.12.15