城の守りは門で決まる
城の役割は敵の攻撃を防御することです。その要となるのは門でした。出撃の場であるということは、当然、敵に侵入されやすいところでもあるからです。この戦いの最前線をもっとも厳重にした形態が、濠を利用した枡形門でした。
枡のように囲まれた四角形の大きさから、そこに侵入している敵兵の概数をすぐに計れます。そこからこの名が付けられました。
四方の石垣のうち、図のように直交する二方向を二つの門とするのが枡形門の基本です。外側を高麗門、内側は櫓門と呼びます。外から来る敵は、高麗門を突破してから必ず右折して櫓門に向かうことになり、隊列が乱れ、速度が落ちるのです。土塀の上部には狭間と呼ばれるすり鉢状の穴が一間ほどの間隔で開けられていました。
これは侵入者に矢や鉄砲を放つ穴で、すり鉢の狭角側に撃ち手がおり、敵を狙いやすく、同時に安全になる工夫が施されています。
ここで重要なのが、侵入する敵兵を右折させることです。すると櫓門内で守る味方の兵から見て、左手側から敵が侵攻する形になるので、狙いを定めやすくなります。また敵は右の利き腕をさらす格好になるのも利点です。櫓門近くまで寄られた場合には、上階の床板を開き、石や矢で攻撃する石落としという仕掛けもありました。
江戸城のプランニング(縄張り)に参与した城づくりの名将・藤堂高虎は枡形門を好んだそうです。実際、江戸城本丸に至るまでには大手門、三の門、中之門、中雀門と多重の枡形門があり、枡の空間をだんだん小さくするという完璧な守りが施されています。難攻不落の城とは、枡形門の優劣次第だといえるでしょう。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.01.14