都の選地は四神相応という占いが重視された
日本各地の古都には共通点があるのをご存知ですか? いずれも川があり、街道がとおり、背景に山がそびえているのです。実はこれは偶然ではありません。こうした風景は、占いの条件に合致しているのです。都の場所を決めるときには、占いが大きく関わっていました。
とくに重視されたのが四神相応という占いでした。都は、四方に住む聖獣が守護してくれる地に置くのがよいという考え方です。条件は、それぞれの聖獣が生息しやすい環境でした。
東の方角に住む青龍は水を好みます。青龍に守ってもらうには、大きな川が必要でした。南の朱雀(赤い鳥)は沢のほとりにある湿地に生息し、西の白虎は大きな道、北の玄武(蛇の頭を持つ黒い亀)は山に潜みます。
東に川、南に湿地、西に街道、北に山が備わった地形が都に相応しい吉祥の地というわけです。京都を例に挙げると、東に鴨川、西からは山陰道が近づき、南には昔、巨掠池がありました。北は船岡山で、四神相応に叶った地といえます。
そのほか、奈良、鎌倉、江戸をはじめ、小京都と呼ばれる各地の城下町や商都の多くがこの条件を満たしているのです。平安貴族の寝殿造も、寝殿の東に遣水を流し、南の池に導いていました。西の門は大路に接し、北に山はありませんが、対の屋根がそのかわりと考えれば、これも四神相応です。
考えてみると、北の丘から南の湿地にかけての斜面は、北風が吹かず、日当たりもよく、水はけ良好な地です。その上、交通の便もよければ最高なのは当たり前といえます。四神相応は、自然と人の調和を心得た環境学だったのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.01.16