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「ラプソード」導入が神戸弘陵学園の投手陣に与えた効果とは!?【データ活用で変わる高校生投手の技術と意識】

【高校野球現場ルポ】データ活用で変わる高校生投手の技術と意識

技術革新が進む野球界。近年は高校野球界にも次々と最新機器が入り、選手育成にも変化が起こっている。昨秋、投球3Dトラッキングシステム「ラプソード」を導入した神戸弘陵学園(兵庫)の投手陣にその効果を聞いた。

データ測定で課題がわかる!「テーマ」を見つけた選手たち

一昔前まで「高校生で140キロ」はいわゆる「大台」だったが、2000年代以降、各地に140キロを超える高校生投手が出現するようになった。スピードガンの精度向上が要因のひとつと言われているが、トレーニング理論の進化も大きなウエイトを占めている。さらに近年はさまざまな最新機器が野球界で導入され、選手たちの成長の一助になっている。

神戸弘陵学園(兵庫)では昨秋、関西地区の高校ではいち早く、「ラプソード」を導入し、トレーニングを開始した。ラプソードとは、日本のプロ野球球団やメジャーリーグも使用する「3D投球トラッキングシステム」。球速はもちろんのこと、スピン数、スピン効率、スピンの軸、変化量やリリースポイントなどが瞬時に測定できる。

自身のデータを知ることでどのような変化が生まれるのか、神戸弘陵投手陣の工夫と成長を追ってみたい。昨年、2年生ながら春季兵庫大会3位の原動力になった芝颯悟投手は「スピン効率」に重きを置いた。

「ラプソードが来る前は感覚で投げていたのですが、同じストレートでもいいボールと悪いボールの違いがわかるようになりました。僕の場合は脱力できていればスピン効率が高いのですが、力むとスピン効率が上がりません。球速を出そうとすると力むので、脱力したままどうすれば球速とスピンを上げられるかを考えていきました」。昨秋はやや不調で端から見ても力んだ棒球が多かった芝投手だが、良い頃のキレが戻ってきた。

「悪い時は投げた後、腕を後ろに巻き込んでいたのですが、前でリリースするようにフォームも修正しています」昨春の好調は勢いの賜物だったが、今春はメカニズムも理解し、「いい球」の再現度を増している。芝投手の平均球速は130キロ台後半。そうなるとどうしても「140キロ」を出そうと力んでしまいがちだが、データを理解することで脱力に成功した。変化球の変化方向や変化量が分かるのもラプソードの利点だ。

 

芝投手とともに昨春兵庫3位の立役者になった田中大夢投手は昨秋の初測定で意外な事実が判明した。「スライダーとカーブの変化とスピードがほとんど同じだったんです。自分では投げ分けているつもりだったんですが、バッターから見れば変わりません。スライダーの握りを変えて、変化をアレンジするとバッターの反応も変わってきました」

田中投手の球速は120キロ台後半〜130キロながら、投球術、ゲームメイク能力に長ける。昨夏は1学年上のドラフト候補・時澤健斗に注目が集まったが、他の強豪校の選手に「神戸弘陵では田中が一番イヤだ」と言わしめた曲者だ。細身でなかなか体重が上がらなかったが、この冬から春にかけて2〜3キロの増量に成功。平均球速も2〜3キロアップした。報道でよく見る「10キロ増量、球速10キロアップ」というような劇的な変化ではないが、トレーニングや食事に意識を向け、着実に階段を上っている。

昨秋の終盤、練習試合で好投を続けていたのは小林楓依斗投手。初測定では高いスピン量、スピン効率を記録し、好調をデータが裏付けた。「僕の場合はスプリットとチェンジアップを使っていたのですが、スプリットが中途半端なボールになっていたので、縦は割り切ってチェンジアップをメインにしました。スライダーも変化するときと変化しないときがあったので、握りをいろいろ試して修正していきました」データが自信になり、今春の兵庫大会では背番号1の主戦格を担った。163センチ65キロの小柄な投手だが、下半身には厚みがあり、一冬越えてさらにガッチリした印象だ。

キャプテンの間嶋優太選手も冬から投手に挑戦中。「普段の練習から一球一球、目標をもって投げることができています。試合でも試したいことが増えるので、頭を使うようになりました。考えて投げるのが楽しいです」

岡本博公監督もデータがもたらした投手陣の成長を評価している。「うちの野球部は自主性重視。練習試合では前もってイニングを伝えて、打ち込まれても多少のことでは変えないスタイルです。だからこそ、データと向き合い、自分自身で課題を見つけて試合に挑んでほしい。春からの練習試合ではそうした試行錯誤が見えるようになりました。指導者がああやれこうやれと言うのは簡単ですが、自分で目標をもってトライアンドエラーを繰り返した方が楽しいじゃないですか」ブルペンでは投手陣でデータを見ながら、アドバイスをし合う姿も。思考と試行のいいスパイラルができているように感じた。

ラプソードの関西地区正規販売代理店であり、ラプソードを活用した指導や測定会を行っている元阪神トレーナーの中務正幸さん(神戸六甲道・ジム&スタジオNeeDS代表)は、データを知るメリットについてこう語る。「たとえば、ストレートが無意識にカット気味になっている投手がいたとして、ラプソードで測定すれば、回転の軸やジャイロ度をリアルに知ることができます。指導や測定会の際には、スローモーションで手元やボールの回転を撮影し、ラプソードのデータと合わせて原因と結果を探りながら、解説しています。もちろん、きれいな回転=打たれないというわけではありません。なぜ打たれるのか、打たれないのか、その投手の特徴やどういう投球をしたいのかをカウンセリングしながら、必要なトレーニングやフォーム、球の握りなどをアドバイスしています」

高校野球界でも広がる最新機器を使ったデータ活用。これから先、さらにハイレベルな投球術を持った投手が次々と誕生する予感がする。

【取材協力】ジム&スタジオNeeDS

出典:『がっつり!甲子園2022』

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