~用不要説と自然選択説~
ヘビにもともと脚がなかったわけではありません。1億年ほど前、トカゲの一部から分岐したとされています。ヘビはどのような経緯で脚を失ったのでしょうか?
18世紀頃から生物学者たちは生物の進化について喧々諤々の論議を重ねてきました。中でも有力な説はラマルクの「用不要説」でした。生物が生活環境に適応するために、よく使う器官は発達し、使わない器官が退化する、つまり生存中に生じた変化が子孫に伝わったのではという考え方です。蛇を例にとれば、トカゲの一部が森の落ち葉の下や、柔らかい砂の下で暮らすようになって、脚でかいて進むより、体をくねらせて進む方が効率的で、そうして移動をしているうちに脚が衰え、そ
れが次世代に伝わったというわけです。
しかし、よく考えてみれば、生涯の間に身につけたことが、子孫に伝わることは、遺伝学上あり得ません。筋力トレーニングにより筋肉むきむきのお父さんから生まれた子供が、生まれたときから筋肉質ということはあり得ないのです。
要不要説にとってかわったのが、ダーウィンによって提唱された「自然選択説」です。偶然の突然変異が、自然環境および生存競争などのフィルターを通して、進化に方向性を与えていくという説です。
例えば、獲物を狙って厳しい生存競争を繰り広げているトカゲの中に、突然変異によって足を失った「足のないトカゲ」がでてきたとします。足のないトカゲは足音を立てずに獲物に近づくことができる点が生存競争に有利に働き、「足のないトカゲ」がヘビへと進化を遂げたのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.07
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