~単細胞生物の特徴~
「あの人は、単細胞だからねえ」。単細胞はそのような文脈で使われることがあります。その意味するところは「単純」です。でも、これは単細胞生物に失礼な言い方ですね。確かにたったひとつの細胞だけれど、そのなかにさまざまな機能を備えているのですから。
たとえばミドリムシ。彼らは光合成をするための葉緑体を持ち、さらには水中を移動するための鞭毛も持ちます。植物のようでもあり、動物の性質も備える生き物です。原生動物と緑色藻類の真核共生によってこうした特徴を備えるようになったと考えられています。
近年はミドリムシが持つパワーに注目が集まっています。ひとつは栄養素。ビタミン・ミネラル・アミノ酸など59種類もの栄養素を含み、さらに一般的な植物のような細胞壁がないため吸収しやすいという特徴があります。近年ミドリムシを使った商品が健康食品として多くのメーカーから販売されています。
もうひとつはバイオ燃料として。ミドリムシの細胞内には脂質が多く含まれているため燃えやすいのです。
ミドリムシを含む単細胞生物は、分裂によって個体を増やしていきます。環境さえ整えれば、その増殖スピードは、有性生殖をする生物の比ではありません。
ミドリムシの研究に特化したベンチャー企業も注目を集めています。前途有望なエネルギー源と言えるでしょう。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.19