~ウニの卵割と生体内の組織~
寿司ネタのウニといえば高級品。旬のバフンウニの美味しさといったら!! 私たちが食する黄色い部分は、ウニの生殖腺(精巣・卵巣)にあたることを知っていましたか? ウニの捕獲時、外見からだけでは雄雌の判別をすることは困難なため、基本的に雄雌に仕分けることはしないようです。
つまり、寿司屋でよく見る「箱ウニ」には精巣も卵巣も混じっているので、あえて生殖腺といったわけです。
しかし、厳密には精巣と卵巣では違いがあります。精巣のほうがやや固く色合いも味も濃厚。一方、卵巣は色がやや薄く、切るとトロリと液状になり、精巣に比べて味は淡白。つまり、寿司屋でどちらが出てくるのかは運任せ……。高級店では精巣のみを集めた高級ウニが使われることもありますが、その価格には選別に関わるコストも上乗せされていることでしょう。
ウニの生態、構造についても簡単に触れておきましょう。ウニは深海から浅瀬まで世界中の海に生息しています。腹面には歯が5本ついた口があり、海藻などを食します。体表のトゲは、敵から身を守る役割を果たすとともに、移動するときには足代わりにもなります。
ウニは、個体の発生を研究する一分野である「発生学」において、実験材料として重宝されてきました。受精卵が卵割を開始し胞胚へと進む発生過程が、透明で細胞内部まで観察しやすかったためです。ちなみに、胞胚後のウニは孵化すると、64時間ほどで三角錘から突起を出した形状のプルテウス幼生になり、海底に固着、変態してウニになります。寿命は最近の調査研究によると、種と環境によっては200年を超えるとか。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.20