淤能碁呂嶋で夫婦の契りを交わす
最後に生まれたイザナキノカミとイザナミノカミは、高天の原に住まう神々から、「そなたたちの力で漂う大地を固め、形を整えよ。そして、*これからはミコト(命)と称しなさい」
と命じられ、委任の印として玉で飾られた天の沼矛(ぬまぼこ)を授けられました。
*これ以降、イザナキノカミとイザナミノカミはイザナキノミコト、イザナミノミコトとなる。
二柱の神は天界と下界をつなぐ天の浮き橋に立ち、神聖なる天の沼矛を海にさし降ろしました。沼矛でコオロコオロとかき混ぜると、矛を引き上げたときに海水がしたたり落ち、塩が固まって積もり、島になりました。これを淤能碁呂嶋(おのごろしま)といいます。
二柱の神は淤能碁呂嶋に降り、高天の原の神々と心を通じ合わせるため神聖な天の御柱を立て、続けて八尋殿(やひろどの)という大きな神殿を建てました。
そこで、イザナキノミコト(伊耶那岐の命)はイザナミノミコト(伊耶那美の命)に、
「そなたの体はどうなっているのか」
と尋ねると、イザナミノミコトが、
「私の体はほぼできあがっていますが、一つだけ欠けているところがあります」
と答えます。そこでイザナキノミコトが、「私の体もほぼできあがっているが、一つだけ余分なものがある。これでそなたの欠けているところをふさぎ、国土を生みだそうと思うが、どうだろう」
といいました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古事記』
監修:吉田敦彦 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
1934年、東京都生まれ。東京大学大学院西洋古典学専攻課程修了。フランス国立科学研究所研究員、成蹊大学文学部教授、学習院大学文学部日本語日本文学科教授を経て、同大学名誉教授。専門は、日本神話とギリシャ神話を中心とした神話の比較研究。主な著書は、『日本神話の源流』(講談社)、『日本の神話』『日本人の女神信仰』(以上、青土社)、『ギリシャ文化の深層』(国文社)など多数。
古典として時代を超え読み継がれている『古事記』。「八岐大蛇」、「因幡の白兎」など誰もが聞いたことがある物語への興味から、また、「国生み」「天孫降臨」「ヤマトタケルの遠征」など、壮大なスケールで繰り広げられると神々の物語の魅力から、最近では若い層にも人気が広まっている。本書は神話・物語を厳選して収録し、豊富な図と魅力的なイラストで名場面や人物像を詳解した、『古事記』の魅力を凝縮した一冊!
公開日:2023.06.07
PREVIEW
「染井吉野」はなぜ一斉に咲く?【図解 植物の話】