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魚に塩を振るとどうして美味しくなるの!?調理でよく耳にする浸透圧はどんな原理?【図解 化学の話】

Text:野村 義宏 澄田 夢久

塩を振るのは一石三鳥のスゴ技

刺身で食する以外、焼き魚には必ず塩(塩化ナトリウムが主な成分)が振られていますね。実はこれ、「一石三鳥」のスゴ技なんですね。まず、おいしくなることが1つ目。細胞内の水分が出て身が引きしまることが2つ目。生臭い成分が水と一緒に出ていくことが3つ目となるわけです。水分が抜けていくのは、「浸透圧」(図1)が関係します。浸透圧とは、半透膜を境にして濃度の薄いほうから濃いほうに水分が移動する圧力現象です。魚の身と皮の間にも半透膜があり、皮に塩を振ると表面の濃度が濃くなって、身から皮の表面へ水分が抜けていくのです。同時に、低分子の魚の臭いの素も抜け出します。刺身を食するときに醤油や塩が欠かせないのは、塩味がないと魚介類のエキスの旨味や甘味が弱められるためです。カニを塩茹でにすることも同じ理由です。また、魚介の腐敗臭は、トリメチルアミン-N-オキシドが分解して生じた「トリメチルアミン」というアルカリ性の成分で、アンモニア臭のある魚臭が発生します。

ご存知のように、魚の保存法には、干物・塩蔵・燻製・甘露煮・麹漬け(図2)などがありますね。いずれも下処理に塩を使うわけですが、これは身の水分活性を低くするためです。魚の処理方法には神経締めや血抜きが欠かせませんが、刺身以外の調理方法では、煮る、焼く、蒸すがふつうでしょう。加熱によってイノシン酸が増え、おいしくなるからです。海の魚にはいろいろな食べ方がありますが、川魚は刺身が敬遠されて、塩焼きや甘露煮にすることが多い。淡水魚には顎口虫や横川吸虫などの寄生虫の危険があるので刺身に適さないからです。「鮭はどうなんだ。川魚じゃないか。寿司屋でよく食べるぞ」といわれるかもしれませんが、実際には鮭の刺身は供されません。刺身は鮭とは区別されたサーモンで、養殖され安全に管理されているため大丈夫なのです。それにつけても、下処理からはじまり、刺身、焼き、煮付け、蒸しと日本人の魚料理は、やはり四方海に囲まれた国ならではの知恵なのでしょう。

浸透圧の原理

浸透圧とは濃度の異なる2つの水分が半透膜(水は通すが、水溶した砂糖などの分子は通さない)を境に隣り合っているとき、濃度を一定に保とうとして薄い濃度の水分が濃い濃度のほうへ移動する圧力現象。

浸透圧の原理『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』

魚介保存法の一例

ししゃも甘露煮
鮭の麹漬け
鮎の燻製

魚介保存法の一例『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』野村 義宏・澄田 夢久

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 化学の話』
野村 義宏 監修・著/澄田 夢久 著

宇宙や地球に存在するあらゆる物質について知る学問が「化学」。人はその歴史の始めから、化学と出合うことで多くのことを学び、生活や技術を進歩・進化させてきました。ゆえに、身近な日常生活はもとより最新技術にかかわる不思議なことや疑問はすべて化学で解明できるのです。化学的な発見・発明の歴史から、生活日用品、衣食住、医学の進化までやさしく解明する1冊!

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