ヘッドの先まで氣を通せば、腕は10メートルの長さで使える
臍下丹田に氣を鎮めることによって、不動の構えができることはすでに述べました。と、同時に不動の構えは、体の中心である臍下丹田に集められた氣が出続けている、と荒川先生はおっしゃっていたものです。
では、氣はどこから出ているかといえば、ゴルフのスウィングの場合、アド レスで体の正面であわせた両手の先です。先ほどイメージした消防ホースを例にとれば、腕はホースであり、指先は勢いよく水の出るその先端の放出口と考えればいいでしょう。
荒川先生が練習場で上田桃子プロを指導する際、もっとも多く口にしたであ ろうフレーズが、「ヘソとボールを氣で結べ!」というものでした。もっと詳しくいえば、ヘッドの先まで氣を通し、さらにヘッドとボールを氣で結ぶ意識です。
「多くの人は腕は肩から指先までだと思っているが、そこに氣を通せば腕は10メートルにも20メートルにも伸びる1本のエネルギーの棒になって使える。ゴルフの場合、指先から出た氣はシャフトを通じてヘッドに流れ、セットしたボールはおろか、打ち終わって飛んで行くボールにまで流すんだ」
まさしく消防ホースから勢いよく出る、水をイメージしてください。多くのアマチュアの特徴に、グリップを強く握りすぎることがあります。プロ、特に一流プロの手のひらが、とても柔らかくきれいなのは、必要なだけの強さで握っているからです。強すぎる握りは手のひらにマメをつくるばかりでなく、さまざまなミスの原因にもなっています。
これを解決するためにも、氣が指先から出ている、という意識はとても大切です。なぜなら強い握りは、そこで氣の流れを途絶えてさせてしまいます。それは腕や肩、首筋などのリキみにもいえることです。
【書誌情報】
『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』
著者:辻村明志
上田桃子、小祝さくらプロをはじめ、女子のトッププロたちをコーチしている本書の著者・辻村明志氏。王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフ指導に取り入れたことは有名だ。本書は、荒川氏から受け継ぎ、コーチングに活用している「氣のスウィング理論」を解説するもの。「氣は心を動かし、心が氣を動かす」という、同氏の考えに基づき、氣の力をゴルフスウィングに活かすことを目的に、その方法をイラストと写真を使いわかりやすく紹介する。
公開日:2020.06.06