ヘソとボールを氣で結ぶ、氣の充実した不動のアドレス
ゴルフは止まったボールを打つために、「静のスポーツ」と呼ぶ人がいます。しかし私は、ゴルフスウィングは一瞬たりとも止まってはならない、と考えています。なぜなら氣は臍下丹田に鎮められ、集められはしますが、そこを軸に流れ、放出され、さらにまた臍下丹田に鎮められるものだからです。その意味で、私はゴルフを「流のスポーツ」と呼んでいます。
さて、それを踏まえた上でアドレスの注意点ですが、すでに第1章で述べている、押しても引いても動かない不動の構えが理想です。「流のスポーツ」といいながら不動の構えとは矛盾するかのように感じる人がいるかもしれません。しかし、不動の構えとは氣が臍下丹田に鎮められた自然体であって、力を入れて動かさない、という意味ではありません。臍下丹田に氣が鎮められれば、自然と重い体になって、結果として不動の構えができあがるというわけです。王貞治さんの一本足打法の構えが、まさに不動の構えでした。
私と上田桃子プロの財布には、「これが最高の構えだ」といただいた王貞治さんの一本足打法の写真があり、迷いが出たときにはいつも見て思い出しています。
もっとも不動の構えなどというと、堅苦しい印象があるせいでしょうか。歯を食いしばり、全身に力を入れて動くまい、動くまいとする人がいます。特にアマチュアの方のアドレスには、驚くほど多く見られます。そうした人に対して私は、同じ野球でもこんなたとえで教えています。
「ちょうど一塁ランナーが、隙をついて二塁へ盗塁もできる、牽制球がきたら一塁に戻れる、あの姿勢をイメージでしてください」不動の構えとは動かないと同時に、どんな状況にも対応できる構えなのです。
そして、その構えをつくるための極意が、「ヘソとボールを氣で結べ」という荒川先生の言葉、そして両足とボールでつくる二等辺三角形の意識です。
【書誌情報】
『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』
著者:辻村明志
上田桃子、小祝さくらプロをはじめ、女子のトッププロたちをコーチしている本書の著者・辻村明志氏。王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフ指導に取り入れたことは有名だ。本書は、荒川氏から受け継ぎ、コーチングに活用している「氣のスウィング理論」を解説するもの。「氣は心を動かし、心が氣を動かす」という、同氏の考えに基づき、氣の力をゴルフスウィングに活かすことを目的に、その方法をイラストと写真を使いわかりやすく紹介する。
公開日:2020.06.22