主な不安障害の種類 ①
ひと口に不安障害といっても、症状に応じてさまざまな種類があります。ここでは主だった5種類について、その原因と症状に触れていきます。
パニック障害
不安障害の中でも代表的な症状
パニック障害は、不安障害の中でも特に症例が多く見られるものです。
ある日、予期せず、身体症状や精神症状を伴い、極めて強い苦痛や不安、恐怖があらわれます。これをパニック発作と呼びます。症状は多種多様で、身体に起こるものとして代表的なのは、動悸や発汗、震え、胸の痛み、息苦しさ、めまいなどです。精神的には、頭が真っ白になる、現実感をうしなう、自分の体が自分のものではない気がするなどの症状がありますが、必ず短時間で治まります。通常は10分程度がピークで、長くても数十分ほどです。またこうした発作自体は1年間に、成人の約1割が経験するといわれており、パニック障害と診断されるのはそのうちごく少数です。
まず、パニック障害の人は、前述のような発作を繰り返します。個人差はありますが、2回目の発作は数日から数週間後のことが多いようです。そして、その経験から、①発作が起きることばかり考えて不安になる、②発作によって死んだり、苦しんだりする結果を恐れる、③外出、面会、仕事などができなくなる、といった悪循環に陥ってしまう場合があります。以上3つのような症状が発作後1カ月以上、1つでも続いている場合は、パニック障害だといえます。ちなみに、発作の身体的な症状は内科的な疾患ではないので、検査をしても異常が見つかることはありません。
なかでも「広場恐怖症」は、パニック障害の人が併発しやすい病気です。ここでの「広場」とは公共の場所というような意味で、レジの行列に並んでいるとき、電車や飛行機、映画館、エレベーターの中などで、「突然発作や強い不安に襲われたらどうしよう」と感じ、そうした場所を避けるようになります。患者自身は「逃げられない」「誰にも助けてもらえない」と強く恐れを抱くのですが、その恐怖が実際の「危険度」と釣り合っていないというのが特徴です。
パニック発作は「突然」起こらない
実は、パニック発作が「突然」起きるというのは誤解です。多くの場合、最初の発作はストレスや心身の不調、疲労などが原因になっています。しかし、本人にその自覚がない場合、「予期せず」に発作が起こったと感じるのです。そして2回目以降は、発作に対する恐怖と不安自体が心身への負荷となり、発作を繰り返すようになります。また発作が起き、今度はどうなるかわからないという「予期不安」のエスカレートは、パニック障害と診断される際の大きな基準です。
人によっては、正式な治療をせずに回復する場合もあります。特に、かつて発作が起きた状況を避けることが困難で、直面し続ける環境にいる場合にそれが期待できます。あえてパニック発作の引き金になる状態を経験し、徐々にならしていく「曝露療法」は、こうした傾向を応用したものといえます。「認知行動療法」では、パニック発作が起きる状況を回避しないこと、自分が抱いている恐怖心には根拠がないこと、ゆっくりとした呼吸などで緊張が和らぐことを認識することで、回復を目指します。
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.03