不安をもたらす「認知のゆがみ」とは
認知とは、時間をかけて形成されたその人なりの価値基準のことです。では、不安障害を考えるうえで重要となる「認知のゆがみ」とは、一体何なのでしょうか。
認知とは「自分なりのとらえ方」のこと
「身体醜形障害」という不安障害があります。自分の顔や体などの外見が醜いと思い込み(強迫観念)、外出ができない、人と会えない、何度も鏡で容姿を確認する、あるいはまったく鏡を見られないといった症状(強迫行為)があらわれます。
自分が他人からどう見られているか気になる、できれば好印象を持たれたいと思う、いわゆる「自意識」は誰にでもあるものです。清潔な身だしなみや明るい表情を心がける、仕事への積極性を見せるといった行為は適度な自意識がなければできません。ただし、これが過剰になってしまうと「身体醜形障害」のような問題が起こります。
自意識の過剰は、「認知のゆがみ」のひとつです。これ以外でも、ほとんどの不安障害には「認知のゆがみ」がかかわっているといっても過言ではありません。
認知の結果によって感情が左右される
認知とは「自分なりのとらえ方」のことです。人間は現実をありのままに見ることがとても苦手です。どんなものごとに対しても自分の中で評価や判断をしてしまいます。その基準は時間をかけて、自分の中で形成され、修正も繰り返されます。苦痛を感じずに日常生活を送れているのであれば、認知に問題はないといえるでしょう。
認知の結果によって、人間の感情は左右されます。特に「認知のゆがみ」のパターンのように、ネガティブなとらえ方をすると、ネガティブな感情が起こり、「ゆがんだ認知→不安→ゆがんだ認知→不安」という悪循環に陥ります。
「認知のゆがみ」は修正できる
身長を例にとってみましょう。Cさんの身長は160センチだとします。あるとき、Aさんから「(共通の知人である)Bさんは背が高いね」といわれました。その言葉をCさんは自分に向けた「背が低い」という評価だと曲解し、AさんやBさんに会いたくないと思ったり、攻撃的になったりするのです。
当然のことですが、160センチの身長とは、150センチの人より高く、170センチの人より低い、ありのままの現実はそれだけです。少し極端な例かもしれませんが、認知のゆがみはこのように起こります。
前にも少し触れたパニック障害の人は、パニック発作の「苦しさ」を「死んでしまう」「気がおかしくなる」「誰も助けてくれない」などと認知し、恐れています。実際にはそうならないのですが、ゆがんだ認知をやめられないのです。
しかし、認知はあくまでも思考なので、修正が可能です。「認知療法」はその点に注目した治療で、不安や恐怖といった感情のコントロールを目指すものです。
CHECK!
- 自意識過剰などの「認知のゆがみ」は誰にでもある
- ネガティブな「認知のゆがみ」は悪循環に陥る
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修
【書誌情報】
『心の不調がみるみるよくなる本』
ゆうきゆう:監修
現代増加の一途をたどる「不安障害」。
不安障害とは払拭できないほどの不安や恐怖の感情が過剰に付きまとい、日常生活に支障をきたすような状態になることです。
一概に不安障害といってもさまざまな症状があり、突然理由もなく激しい不安に襲われて発作などを引き起こす「パニック障害」や、謎の強迫観念にとらわれて意味のない行為を繰り返す「強迫性障害」、若者に多く人前にでると異常に緊張して体調を崩す「社交不安障害」などタイプは異なります。
本書ではそのような不安から引き起こされる心の不調について、症状例をそえて専門医がわかりやすく解説。自分の「不安障害度」を簡単にチェックできる診断テストも掲載。病気を自覚し、その症状にあわせた治療を受けられるようサポートする一冊です。
公開日:2024.12.15