症状と漢方処方 腰痛
高齢になると腎虚がすすみ、体を支える力が弱まって腰痛が起こりやすくなります。腰がだるい、重いからはじまり、しだいに痛みが出て歩くのもつらいといった状態にすすんでいってしまうので、早いうちに対処するようにしましょう。腰を支えられなくなると、猫背になり、結果的に肩もこるようになります。肩こりと腰痛の両方がある人は、まずは腰痛の治療をするとよいでしょう。
体質からみる血虚、瘀血による腰痛
血が滞ることで腰に瘀血が生じる
処方:疎経活血湯
血行が悪くなって痛む
血の不足や滞りが原因で起こる腰痛で、瘀血では痛みが強く出ることもあります。疎経活血湯は肩こりにも使いますが、下半身の瘀血改善に効果が高い漢方薬で、血を補いながら血の流れをよくして、痛みを緩和します。
体質からみる腎虚 による腰痛
加齢とともに腎が弱まってくる
処方:牛車腎気丸
腎虚は早めの対処を
腎虚による腰痛は、痛いというよりも、立っていること自体がつらくて座りたくなるような症状が特徴。腎虚がすすむと、足がやせてきてしまうので、早めの手当が必要です。
滋養強壮作用のある地黄・山茱萸・山薬が配合された牛車腎気丸を用います。
病邪からみる風湿による腰痛
湿は下半身にたまりやすいので注意
処方:防己黄耆湯
ひざにも痛みが出やすい
水は体の下にいってたまるので、上半身よりも下半身のほうが湿によるトラブルが起こりやすくなります。湿邪によって冷え、腰の筋肉が緊張して起きる腰痛で、下肢のむくみ、ひざの痛みなどもあらわれます。このタイプの腰痛には、水分代謝を促す防己黄耆湯を用います。
養生・セルフケア
過ごし方
腎虚の人は、冬に不調になりやすいので、冬の過ごし方に気をつけましょう。腎のエネルギーが不足しないように、無理はせず、夜ふかしもやめて十分に睡眠をとること。冬のあいだエネルギーを充電して、春へと備えましょう。
ツボ
腎の働きをよくするツボを刺激して、腰痛を緩和しましょう。
腎愈
へそのうしろの位置の背骨から、指2本分外側。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
漢方の処方によく使われる生薬と漢方薬の事典。
漢方の元となる生薬図鑑では、119の主な生薬について、元となる植物を、写真と細密なイラストで紹介。
薬効や処方だけでなく、生薬に対する知識や理解をより深めることができます。
不調やトラブルに対する漢方処方は、体質や病邪からみています。
どんな体質の人がその症状に陥りやすいのかどこに原因があるのか、どの漢方薬を処方するのか。およそ30の症状について個別に解説しています。
専門家による「証」を基準とせず、体質で判断できるので、一般の方にもわかりやすい内容です。
漢方薬については、298処方の適応症状、体質、分量、出典などを紹介。
漢方を学ぶ人だけでなく、漢方薬局や漢方処方に興味のあるすべての方におすすめの一冊です。
公開日:2024.12.16