僕の場合「推定額」が正解です! プロ野球選手の年棒と、契約更改の仕組みをぶっちゃけ! 巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第10回!

第10回 契約更改の流れやお金に関する本音

高梨雄平

収入が世間に報じられるのってプロ野球選手だけ

ラブすぽ読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。前回のコラムでは僕がFA権を行使せずにジャイアンツに残留した理由を書きましたが、今回も引き続き「契約更改」やプロ野球選手と「お金」の話を少しだけしたいと思っています。

まず、僕が就いているプロ野球選手という職業には、いわゆる「一般の職業」とは大きく違う点がいくつかあります。そのひとつが、「毎年の年俸が世の中に公表される」ということ。報道されている金額はあくまでも推定ですが、それでも働いている人間にとっての「給料」ってメチャクチャ個人情報ですよね(笑)。本来であれば親しい人にも言わないような自分の懐事情が、テレビや新聞、ネットニュースでバンバン報じられる職業って、日本ではプロ野球選手くらいしかないんじゃないでしょうか。

プロ野球選手として、年俸が公表されることはある意味で「エンタメ」の一環。現役でプレーする立場としてはそれ以上でも以下でもないです。逆に、現役引退後も収入が公開される……とかだったらちょっと嫌かもしれませんね。もちろん、自分からわざわざ言うことではないですし。

ちなみに僕は契約更改後の会見で比較的具体的な金額に言及するタイプなんですけど、報道されている金額が「正解」と思っていただいて構いません。ぶっちゃけて言うと、「推定額」と「実際の年俸」がけっこう違う選手も、いるっちゃいます(笑)。

高梨雄平

球団の査定担当さんが大変!

お金の話でプロ野球選手が特殊な例はもうひとつあります。それが、「毎年、成績に応じて金額が大きく変動する」こと。僕も企業に勤めていた経験があるのでわかりますが、サラリーマンのフルコミ(完全歩合制のこと)は別で、サラリーマンの方の給料って、勤続年数や年齢である程度のベースが決まっているものです。変動があるとしても、実績に応じたボーナス査定くらい。役職もそういった積み重ねで決まることがほとんどだし、就職2年目の社員がいきなり10年先輩の給料を上回ることなんて、なかなかないはずです。

ただ、プロ野球選手の場合は、それが起こりえます。ただ、これは実力社会なので仕方がない……というかむしろ当然で健全なことだと思っています。僕がむしろ「大変だなぁ」と思うのは、選手よりも球団の査定担当のスタッフさんです。ジャイアンツの場合、所属する選手がだいたい100人くらいはいます。一般企業であればある程度の「ベース」をもとに査定できると思うんですけど、プロ野球の場合はその100人すべてに違う査定が必要になる。

僕ら選手はシーズンが終わると一区切りつきますが、たぶん査定担当や交渉担当スタッフの方々は「ここからが本番」なはず。本当に、お疲れ様ですと言いたいです。

一方で、個人事業主でもあるプロ野球選手には、毎年「戦力外」を通告されるリスクもあります。僕自身、年俸が上がれば当然求められるものも高くなる。「コスパ」を考えたら高年俸の選手はそれ相応の働きをしなければいけません。そこだけは肝に銘じています。

ありがたいことに、僕は来季からジャイアンツと複数年契約を結ぶことになりました。契約が切れたとき、新たにジャイアンツから契約提示を受けてもらえるかどうかは、誰にもわかりません。ただ、「コスパが悪い選手」にならないことは意識してプレーしたいと思っています。

FA権も行使しませんでした。もちろん、ジャイアンツはすごく良い球団だし、僕自身にとってもベストな環境だと感じています。

高梨雄平

「いつかはメジャー」の思い

ここであえて書かせてもらうと、ぶっちゃけ「いつかはメジャーリーグで……」という気持ちも実は持っています。ただ、おそらく他のメジャーを目指す選手とは少し事情が違って、僕のモチベーションのひとつになっているのが「松井裕樹といつかまた一緒にプレーしたい」という思いなんです。

彼とは楽天時代に一緒にプレーして、3学年下なんですけど面白いヤツなんです。正直、楽天からトレードでジャイアンツに移籍した当時から、「また一緒にやりたいな」という思いはあったんですけど、メジャーに行っちゃったんで……(笑)。年齢的にも、たぶんしばらくはメジャーでやるでしょうし、それなら僕が行くしかないかなと(笑)。

彼とは最近、話す機会があったんですけどメジャーに行ったことでメチャクチャ成長していました。ドラフト1位でプロ入りして、基本的には大きな挫折もなくメジャーに行きましたけど、向こうでの1年目はこれまでのクローザーとは違って「便利屋」的に起用されていましたよね。シーズン中は調整方法などを聞かれたこともあったので僕に答えられる範囲で応えましたけど、やっぱり日本とメジャーは違うと思うので、彼の本当の苦労はわかりません。ただ、「いろんなところで投げる苦労がわかった」とは言ってました(笑)。

もちろん、彼と一緒にプレーするというビジョンは正直、現実的なモノではないというのは理解しているし、実現しないことかもしれません。ただ、僕の中で心の燃料になるものの1つを、今回はこのコラムを読んでくれている読者の方にお伝えさせて頂きました(笑)。

次回はなにを書きましょうかね……。たぶん、オフ期間のうちに伝えたいことも出てくると思うので、次のコラムも是非楽しみにしていてください!

高梨雄平

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