Q. アジサイはなぜ丸いものが多いのか?
A. 日本のアジサイが丸くなって、ヨーロッパから帰ってきた
色とりどりのアジサイは、小さな花びらがたくさん集まって丸い形をしているものをよく見ます。これらを手まりアジサイとよんでいますが、正式な和名はセイヨウアジサイです。
名前からわかるように、セイヨウアジサイはヨーロッパから輸入された栽培品種です。実はアジサイの原産地は、日本なのです。日本原産のガクアジサイという品種が中国に伝わり、そこからヨーロッパに持ち込まれ、品種改良によってできたのがセイヨウアジサイです。つまり、セイヨウアジサイは、いわば出戻りの花です。
ガクアジサイの形は、セイヨウアジサイのように派手ではなく、数えるほどしかない花びらが中心を囲むような形をしています。ガクアジサイという名前からわかるように、「花びら」は本当の花びらではなく、つぼみを包んでいる葉であるガクが花のように変化したものです。
セイヨウアジサイの花びらもすべてガクが変化してできています。これを「装飾花」といいます。
では本当の花はどこにあるのでしょうか。ガクアジサイの場合は、中心に小さく目立たないものがたくさん集まっていますが、一つひとつがおしべもめしべもある本当の花です。これに対し、セイヨウアジサイには、本当の花は存在せず、装飾花だけの品種です。
ガクアジサイの装飾花は、地味な花に昆虫を招き寄せる役割をしています。昆虫は、この装飾花を目指してガクアジサイに蜜を求めてやってきて、結局花粉を運ぶことになります。
一方セイヨウアジサイには、本当の花がありませんから、昆虫が来ても蜜はなく、受粉もできません。セイヨウアジサイは、ガクアジサイのように種で増やすことはできず、挿し木で増やします。
1日本と西洋、アジサイの違い
ガクアジサイ
日本固有の種
花の集まり ガクが変化した装飾花
日本のホンアジサイも手まりのように丸く咲く。これはガクアジサイの品種改良種。
セイヨウアジサイ
ヨーロッパから帰ってきた花
すべて装飾花
本物の花はない
2まだまだある、花ではない花
ハナミズキ
装飾花 花の集まり
ハナミズキの花弁に見えるのは苞。本当の花はとても地味。ハナミズキは、葉が変化して苞が花びらのようになった。萼片(がくへん)と苞は似ているが、花びら全部を支えるのがガク、つぼみをくるむようにして守っているのが苞だ。
この見た目がすごい
アジサイの装飾花は、変化した萼片からできている。変化した萼片と苞は花びらに見えるので区別しにくいが、それぞれの役割が違う。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
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監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
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公開日:2025.02.03