第12回 キャンプインしてからの調整とは?
ラブすぽ読者のみなさん、いつもこのコラムを読んでいただき、ありがとうございます。プロ野球も春季キャンプが始まり、3月28日の開幕戦に向けて、僕自身も順調に調整を続けています。
キャンプインの時期は例年、ほぼ全球団が2月1日。だいたい、開幕の2カ月前です。「2カ月」という準備期間については、選手によって「長い」「短い」など、いろいろな感覚があると思うんですけど、僕個人の話をすると「ちょうどいい」という感覚を持っています。
理由はいくつかあって、ひとつはユニフォームを着てプレーすることで生まれる「いつもとは違う体の張り」に慣れること。不思議なもので、たとえば自主トレで着ているようなトレーニングウェアとユニフォームでは、同じような練習、同じような出力だったとしても体の張りが全然違います。それに体を慣らすという意味でも、2カ月くらいの準備期間は、僕にとってはちょうどいいんです。
ちなみに、「体の張り」という意味では一軍と二軍でもけっこう違います。これは練習ではなく実戦のケースですけど、同じように投げても一軍の試合で投げるのと二軍で投げるのでは試合後の感覚がまったく違う。出力は同じだけ出しているつもりなんですけど、スピードだけを見ても3~4キロ違いますし、そこはやはり「脳」の部分が影響しているのかなと感じます。アドレナリンが出ることで、体の感覚は同じでも実際の出力が変わってくる。「一軍独特の張り」はプロ野球選手を続けている中で、今も感じることです。
あとはチーム全体の動きや試合勘も含め、1カ月間あるキャンプで徐々に「公式戦モード」に体を仕上げていく。調整のスピードも、プロに入ってから年を追うごとに「じっくり体を作っていく方がいいな」と感じるようになりました。以前はキャンプインに向けて一気に状態を上げて、キャンプではアイドリングしながら調整する、という方法もとっていたんですけど、そうではなく少しずつ、ゆるやかに状態を上げていくほうが、最終的な仕上がりが「きれい」になる。
これも、プロ入りから毎年、ちょっとずつ何かを変えながら導き出した「現時点」での答えです。この「ちょっとずつ変える」も実はすごく重要で、たとえばアレもコレもガラッと変えてしまうと、何が良くて、何が悪かったか分からなくなってしまうんです。他は変えずに何かを「ちょっとずつ」変化させることで、それが正解だったのか、不正解だったのかが明確になるんです
時間がかかるように思うかもしれませんが、「何が良くて、何が悪かったのか」が分からなければ、ダメだった時に自分でコントロールが効かなくなってしまう。一気に変えて、急激に成長できるパターンもなくはないですけど、成長した理由を自分で理解できれば崩れにくいはず。これも、野球に関わらずすべてのことに当てはまるはずです。
良い結果であれ、悪い結果であれ、自分でその理論理屈を説明できるかどうかは、けっこう重要だと思うんです。ただし、そのひとつ前の段階として「それを理解する必要があるか」を判断する必要もあります。そのうえで「理解が必要」なのであれば、説明できるにこしたことはない。でも、すべての事象を説明できるようになろうと思ったら、1日24時間ではたぶん足りません(笑)。
自分の理解の範疇を超えていること、自分ではコントロールできないこと、あとは「理解するのは今じゃないな」ということはしっかりと分けて、そうじゃない部分に関してはちゃんと説明できるようにする。
もうひとつ重要なのは「説明できること自体には価値がない」ことも意識しておくことです。重要なのは説明できることではなく、そのうえでどう活用するか。大切なのは自分が何をすべきかなので、「説明できます!」だけじゃ意味はないんです(笑)。
……と言いながら、僕自身はけっこう考えこんでしまう性格なので、理解する必要のないモノ、説明する必要のないモノのことまで頭を巡らせてしまう癖があります。だからそういう「無駄」を省くことは意識しているし、訓練もしてきたつもりです。
たとえば子どものころは「なんで空は青いのか……」みたいなことを考えてしまうような、そんな子供でした(笑)。もちろん、それを考える必要のある人も、説明できるようにならなければいけない人もいるはずです。ただ、少なくとも今、プロ野球選手になった僕には必要のないこと。無駄を省くことで、自分に必要なモノが見えてくるし、それだけに時間を費やせる。そんな考え方も、必要なのかなと思っています。
気付いたらキャンプの話からだいぶ逸脱してしまいました……(苦笑)。でも、こうやって自分の脳内で考えていることをアウトプットする機会があるのも、実はメチャクチャありがたいんです。
読者のみなさん、これからも是非、僕自身の頭の中の「覗き見」にお付き合いいただけると幸いです(笑)。
公開日:2025.02.25
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