「アハ!体験」でひらめきのクセをつける
ある大手のおもちゃメーカーでは、新入社員にアイデア出しのトレーニングをさせるそうです。学生時代、おもちゃについて真剣に考えたことなどなかった人がほとんどですから、はじめは1日中考えても1個も出せない人だっています。
ところが、しばらく経つと30も40も出せるようになってくるといいます。脳はひらめきのクセをつけると、こんなに変わっていくのです。
このとき、私たちの脳はどんな状態になっているのでしょうか。
考えてはそれを打ち消し、別の角度からのアプローチを模索し、しっくりくるものを求めて頭をフル回転させ続けているのだと思われます。そして、「これだ!」というアイデアが生まれてくるというわけです。
これを脳科学の用語で「アハ!体験(Aha!Experience)」といいます。何かについて説明されて腑に落ちたとき、英語で「Aha!」などといいますが、そこからきた言葉です。
じりじりするようなもどかしさのなかで、真剣に考え続けていると、ある瞬間にパッと頭のなかが明るくなったように、「これだ!」という感覚が得られるのが、「アハ!体験」です。そしてアイデア出しというのは「アハ!体験」の典型的なものです。
わからない問題をじっと考えて脳をフル回転させ、脳が活性化する状態をつくり出す。これが、アイデアを出すための近道だと考えられます。
脳研究をする立場からすると、非常に興味深い現象がここにあります。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.30