人間がAIに勝る部分を伸ばせば共存できる
近年、人工知能(AI)の台頭が著しく、いつか人間はAIに使われる存在になるのでは、と心配する人もいるかもしれません。
AIというのは、人間の知性を取り出して機械に移し、学習させながら進化させていく、人類の壮大な実験だといえます。人間という存在の「鏡」をつくっているといってもいいでしょう。
近年、さまざまな事象を分析して最適解を導き出す能力を備えたAIが次々と開発されています。実際に将棋や囲碁の世界で、プロを負かしてしまうAIがすでに登場しています。
今後遠からず、人間が凌駕され、AIに置き換えられてしまう分野が出てくるのは必至です。ただし、それは、人間の限られた一部分だけを代替しているだけに過ぎません。
たとえば、AIは人格や個性につながるパーソナリティを再現することはできません。なぜなら、人格を表現するよいモデルがまだ存在しないからです。さらに、人間の豊かな感情を再現することもAIにはできません。
音楽を聴く、絵画を観賞する、小説を読むといったことを通して、私たちはさまざまな感動を覚えますが、現在のAIは芸術に対して、ほとんど何のリアクションもとれません。
AIはダ・ヴィンチの絵を模倣して描けるかもしれませんが、「素晴らしい!」と感動する能力はないのです。
AIには再現できない、人間の人間らしい能力を伸ばしていくことができれば、互いに補い合いながら共存していけるのではないか、と私は考えています。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.12.04