解釈を変えることで矛盾を解消する
自分の心の中に矛盾を抱えた状態のことを「認知的不協和」といいます。これはフェスティンガーによって提唱された理論で、認知的不協和が起きると、人は無意識のうちにそれを解消しようとします。
これについてフェスティンガーは、次のような研究を行っています。ある宗教団体の信者たちは「1954年12月21日に大洪水が発生して世界は滅びるが、自分たちは宇宙人によって助けられる」と信じていました。しかし、当日になってもなにも起きません。
ここで信者たちは、自分の心の中に「予言は必ず実現するはずだが、実際は大洪水も宇宙人も来ていない」という矛盾を抱えることになります。そこで信者たちは「自分たちの信仰心によって神が洪水を防ぎ、世界は救われたのだ」と考えるようになりました。
予言が外れたという事実の解釈を変化させることで、自分の中の矛盾、すなわち認知的不協和を解消したというわけです。
これと同じようなことは喫煙者にもいえます。喫煙者にとって、健康に悪いにも関わらずタバコを吸っているという行為は、自分の中に矛盾を抱えた状態といえます。
これを解消する方法としては、思い切って禁煙するという手もありますが、これはそう簡単にはできません。そこで、「喫煙者でも長寿の人がいる」とか「禁煙するストレスのほうが体に悪い」というふうに考えて、認知的不協和を解消しようとします。
このように人は、自分に都合の良い情報だけを選んだり、解釈をしたりすることで、できるだけ認知的不協和を起こさないようにしているわけです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!
公開日:2021.03.16