巨大ファンが生む推力 少ない燃焼で得られる圧倒的なパワー【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


ファンの大きな役割
ただの空気を噴出して大きな力を発揮
ノーズ・カウルから流入した空気は、すべてエンジン内部に入るわけではありません。例えばCF6エンジンでは、約16%がエンジン内部に入り、約83%以上は燃焼されずに、ファンが空気をそのまま後方に噴出します。
このようにエンジンが吸い込む全体の空気のうち、ファンが噴出した空気がエンジン内部に入らずにバイパス(通過)する割合をバイパス比と呼び、ターボファン・エンジンの性能を比較するものさしの一つになっています。CF6エンジンの場合には、83÷16≒5から、バイパス比は5となっています。
ファンで加速された大量の空気を比較的遅い速度で噴出して、実に全推力の75%はこのファンによるものです。吸い込んだ空気の16%で大きなファンを回しているため、ターボファン・エンジンは効率がよいエンジンといえるでしょう。
なお、ファンが大きくなるにしたがって、ファンの回転速度は遅くなる傾向にあります。
例えば、初期のターボファン・エンジンであるJT8Dエンジンのファンの直径は約1メートル、バイパス比1.1で、最大回転速度は毎分8600回転と高速です。そして直径は約2.4メートルのCF6エンジンでは、毎分3600回転。さらに直径3・25mメートルと大きいGE90-115Bエンジンは、最大でも毎分2355回転と非常に遅くなっています。
ファンの回転速度が遅くなったとしても、推力の大きさとしてはJT8Dエンジンが約6.4トンであるのに対して、GE90-115Bエンジンは約52.3トンで、遅い速度で大量の空気を噴出していることがわかります。
ファンの大きな役割



【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
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