エンジンスタートに20秒もかかる!? ジェットエンジンが自立する仕組みとは?【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


エンジン・スタート(その2)
自立までの道のり
燃料コントロール・スイッチを「RUN(運転)」位置にした後、約束の回転数(毎分約2000回転)になると、まず点火プラグが「カチカチカチ」と火花を散らし始めます。
次に燃料が少しずつ燃焼室に入っていきます。自動車のガソリン・エンジンが、圧縮空気と燃料を混合してから点火するのとは逆です。ジェット・エンジンの場合は、燃料が先だと燃焼室以外で燃焼、つまりエンジン火災になる恐れがあるためです。ガスコンロが「カチカチ」といってからガスが出るのと同じ理屈です。
点火に成功した後は、連続燃焼するため、点火プラグは次のスタートまで必要ありません。しかし、点火に成功したからといって、自立したわけではありません。ようやくタービンを回す準備が整っただけです。
また、燃焼に使われる圧縮空気は、全体の空気の約25%程度で、残りの圧縮空気はタービンなどを冷却するために使われます。そのための十分な圧縮空気を得るためには、燃焼が始まってもまだまだスターターの助けが必要です。
いったいどのくらいの回転まで助けが必要かと言えば、実に最大回転速度の50%(5000回転/分)の高速回転まで必要です。自立回転に達するまでは、燃料の量も少しずつ増やしていくようになっていて、その役割をする装置を燃料制御装置(FCU)と呼んでいました。しかし現在では全権デジタルエンジン制御装置(FADEC)、あるいは電子式エンジン制御装置(EEC)と呼んでいます。スターターの助けが終了し、自分自身でアイドリングまで加速し、ようやくスタート終了。この間、約20~30秒ほどです。
エンジンスタートを中止するとき
実際のエンジン・スタートは2つのスイッチを操作するだけで監視(業界用語ではモニターといいます)しているだけです。
もしエンジンに異常があった場合には、自動的にスタートは中止されます。その代表的な異常スタートをあげてみましょう。
ホットスタート:エンジンの異常燃焼。燃料流量の過多やスターターの力不足などが原因
ウエットスタート:規定時間内に点火が確認できない(排気ガス温度の上昇がない)。点火プラグの不良が原因。
ハングスタート:回転するのが通常よりも遅くホットスタートを伴うこともある。燃料流量が少な過ぎることやスターター、圧縮空気の力不足が原因。

以上のような異常があったら、スタートを直ちに中止し、エンジン内部の残燃料を排出するためにしばらくの間エンジンをから回り(モータリング)させます。
ところで、アイドリング回転速度は、ファンが毎分約 1000回転高圧圧縮機は約6400回転で最大回転速度の60%以上となっています。ガソリンエンジンのアイドリングが 600回転ほどで最大回転の10%程度であることから、ジェット・エンジンのアイドリングはかなりの高速であることがわかります。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。