世の中にどれほどの衝撃を与えたか
1990年代初頭になると、AI研究は再び冬の時代を迎えます。研究者の多くは機械翻訳や音声認識、ロボット工学といった専門分野の課題に専念するようになりますが、コンピューターの分野では大変革が起きていました。
それは処理能力の飛躍的な向上と小型化・低価格化によるパソコン、そして世界中のコンピューターを結びつけるインターネットの急速な普及です。こうした環境の変化に加え、パールによる確率的アプローチにより、AIは新たなステージに立つことになりました。
これは、機械学習のベースになっているもので、膨大な事例を計算し、グループ分けを確率的に繰り返すことで正解に最も近い結論を確率的に絞り込んでいく方法です。
その成果としてよく知られているのが、1997年にIBMの人工知能ディープ・ブルーがチェスの世界チャンピオンに勝利したことです。さらには、2016年になるとグーグル ディープマインドの囲碁AI アルファ碁(Aplha Go)が韓国のトップ棋士に勝利しました。アルファ碁はディープラーニングを取り入れることで、チェスよりも候補手が複雑な囲碁でも人間に勝利できることを証明したのです。
これは数あるAIの成果のひとつに過ぎませんが、複雑な思考が必要なゲームで「人間が機械に負けた」という事実が大々的に報道されたことで、人々に衝撃を与えたのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 AIとテクノロジーの話』
監修:三宅陽一郎 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
ゲームAI開発者。京都大学で数学を専攻、大阪大学大学院理学研究科物理学修士課程、東京大学大学院工学系研究科博士課程を経て、人工知能研究の道へ。ゲームAI開発者としてデジタルゲームにおける人工知能技術の発展に従事。国際ゲーム開発者協会日本ゲームAI専門部会チェア、日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理 事、人工知能学会編集委員 。
進化し続けるAI(人工知能)とテクノロジーにより「シンギュラリティ」は刻々と近づいている。ビッグデータ、IoT、ディープラーニングをはじめ注目の仮想通貨・ブロックチェーン・MRなど、知らないではすまされない最先端の技術革新と私たちの近い未来の「変わる生活」をについて、科学オンチにも身近で大切な話題を中心テーマにわかりやすく図解した一冊!
公開日:2023.01.08