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600巻の経典のエッセンスを凝縮【般若心経】

Text:宮坂宥洪

受け継がれた玄奘訳の般若心経

般若心経を漢訳したのは、厳密にいうと、実は玄奘が最初ではありません。玄奘より250年近く前に、後秦の鳩摩羅什(くまらじゅう)という人が、「摩訶般若波羅蜜大明呪経(まかはんにゃはらみつだいみょうじゅきょう)」として漢訳しています。

さらに、それより200年前に呉の訳経家、志謙(しけん)が訳しており、これは「摩訶般若波羅蜜大明呪経」という題名だけが伝えられています。こうしたことから、般若心経の原形は、インドで3世紀頃には成立していたと推測されています。

玄奘以後にも、漢訳が5本残されていますが、一般に「般若心経」といえば玄奘訳を指します。中国でも古くから般若心経の研究・解説が盛んになされてきましたが、いずれも玄奘訳に対するものばかりです。それほど、玄奘の漢訳は重んじられ、親しまれてきたのです。

般若心経は、その多くが大般若経から抜粋されていることから、大般若経のエッセンスを凝縮したお経と位置づけられます。大般若経600巻を持ち帰り、生涯をかけて漢訳した玄奘だからこそ、後世まで長く受け継がれ、人々を魅了する漢訳を成し遂げられたのでしょう。

その一方で、玄奘は、羅什の訳を尊重する訳しかたもしています。西域への旅の道中、玄奘が頻繁に般若心経を唱えていたと推察できる資料もあり、玄奘にとって、いろいろな意味で般若心経が特別なお経だったことがうかがわれます。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 般若心経』
著:宮坂宥洪 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
真言宗の僧、仏教学者。1950年、長野県岡谷市生まれ。高野山大学仏教学科卒。名古屋大学大学院在学中、文部省国際交流制度でインド・プネー大学に留学し、哲学博士の学位取得。岡谷市の真言宗智山派照光寺住職。

今、人気の空海(真言宗)をはじめ、最澄の天台宗、臨済宗、曹洞宗で読まれている「般若心経」。写経を中心に長く人気を博している般若心経だが、まだまだ「難しい」「よくわからない」といったイメージを持たれることも多い。今回は、現代語訳をしっかりと解説しつつも、私たちの実生活と結びつけながら、その思想や意図するところをわかりやすく解き明かしていく。

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