受診しても通報されることはない
薬物依存症で苦しんでいる方に何よりも伝えたいのは、なるべく早く病院に行ってほしいということです。大石クリニックでは、たとえ違法薬物への依存でも、受診がきっかけで通報することはありません。依存症は治療が必要な疾患です。 薬をやめられない悪循環を断ち切れるのは治療だけです。逮捕されてようやく受診に繋がった患者さんが「捕まってよかった」と本音を漏らすことも少なくありません。この言葉には、「自分ではどうにもならない。誰か止めて」という底知れない苦が凝縮されています。薬物依存症は、アルコール依存症と同様に、軽症ならば通学・通院しながらでも治療可能です。
ただし、抗酒薬や飲酒欲求低減薬のように依存対象を遠ざけられる薬はなく、スリップ (再使用)を繰り返すことも。ですが、スリップしたからといってそれまでの治療が無駄になるわけではありません。スリップするたびに、引き金になった原因やそのときの気持ち、対処法を治療者とともに検討し、再発防止のヒントにして乗り越えましょう。また、集団プログラムや自助グループで、体験や悩み、本音を語り合うことも心のケアになり、次第に薬物との距離を保てるようになります。自宅からの通院が困難、離脱症状がきついといった場合は、薬物依存症のグループホームへの入居や、入院による解毒・治療も検討します。
薬物依存症の主な治療法
薬物依存症は必ず施設に収容されるわけではありません。軽度ならば社会生活を送りながら通院によって治療することができます。
通院の場合
■集団精神療法、 集団認知行動療法
他者の話を聞きながら自分と向き合い、具体的な対処行動を学ぶ。
■薬物療法
医師の指示で用法・用量を守って服薬し、精神症状を軽減する。
■デイケア、グループホーム、就労支援
再発防止・薬物教育・アサーション(相手も自分も尊重する自己主張の仕方。)など教育プログラムを受ける。
入院の場合
■解毒のみの入院
再使用を繰り返すケース、薬物使用で救急搬送されて入院治療が始まることも。入院は2~3週間。
■心理教育も兼ねた入院
解毒と並行して薬物を使用する心理や現実と向き合い、退院後の断薬や再発防止を目指す。入院は3か月が目安。
出典:『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』大石 雅之
【書誌情報】
『短時間でしっかりわかる 図解 依存症の話』
大石 雅之 著
特定の物質や行動をやめたくてもやめられない病の「依存症」。スマートフォンの普及や時代の変化にともない、依存症の種類も多様化しました。「スマホ依存」「ゲーム障害」などの言葉は、テレビやインターネットのニュースで目にする機会も増え、社会問題として注目されています。依存症は一度症状が出てしまうと完治が難しい病気です。本書はその依存症について具体例を交えながら、依存する人としない人の違いや依存症の進行の仕方、依存症が起こるメカニズムなどを、メンタルマネジメントや環境、生活習慣の観点から図解でわかりやすく解説。
公開日:2023.08.24