まずは自殺か他殺かを見きわめる
科学捜査の手法は、起こった犯罪によって異なります。殺人、死体損壊・遺棄、傷害、暴行、窃盗、強盗、略取、誘拐など、犯罪はさまざまです。特に、変死体からはまずは自殺なのか、他殺なのか、それとも病死なのかなどを見きわめなくてはならないのです。
DNA型鑑定の精度は「人智を超えた神の眼」とまでいわれるほどの進歩を遂げていますが、死体やDNA型鑑定だけですべてがわかるとは限らないのです。鑑定をする前に、自殺か他殺か病死かという判断を誤ると、事件そのものが解決できないばかりでなく、他殺の場合、次の被害者が出てしまうという残念な結果になってしまいます。
テレビなどで「検死(検視)」という言葉をよく耳にしますが、この検死(死体検案)は医師が法医学的知見に基づいて、死体を外表から検査する行為で、医師の立会いのもと司法警察員などが代行して行う行為を「検視」といいます。
この検視で死因や死亡時刻の推定を行い、検死による死体検案書や検視による死体見分調書が自殺か他殺かの判断材料のひとつになります。
法医解剖のうち、殺人などの犯罪性がある場合は「司法解剖」が実施されますが、変死体の多くは解剖を実施しないケースがほとんどです。
実際に日本の警察庁が発表した異状死体のうちで法医解剖にまわされたのは11・2%(平成24年発表)と低く、日本は偽装殺人の天国ともいわれています。ちなみに、世界で1番異状死体解剖率の高いのはスウェーデンの89・1%です。犯罪の解明には科学捜査の最新技術の法科学と変死体の司法解剖などの法医学の両輪が大切です。
出典:『図解 科学捜査』監修/山崎昭
【書誌情報】
『図解 科学捜査』
監修:山崎昭
科学捜査は驚くほど進化している。血液や指紋・DNA鑑定、顔認証システム等の画像解析やインターネットを駆使した情報分析など、微細な証拠から犯行の立証、犯人逮捕に結びつけている。刑事ドラマや推理小説などで活躍する科学捜査の実体、その最先端の技術、方法など全貌を図解で徹底紹介!微細な証拠も大いに真実を語る、犯罪は絶対に見逃さない。
公開日:2021.09.01