老後に私たちが備えるべきこととは?
これまで老齢厚生年金は60歳から支給されました。ところが、制度改正で男性は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人は、年金支給が65歳からとなり、60歳から65歳までの5年間まったく年金が出なくなります。
2018年時点でいえば、57歳以下の男性、52歳以下の女性に該当します。政府は定年延長の法改正を行い、65歳定年への移行を促し、2025年からは65歳定年が義務化されます。
年金の支給開始年齢の繰り延べに合わせ、こうした定年延長が開始されたのです。将来、支給開始年齢が、さらに70歳や75歳へ引き上げられれば、これにともなって定年も延長されるはずです。
1960年当時の日本人男性の平均寿命は65・32歳、女性は70・19歳でしたが、2017年には男性81・09歳、女性87・26歳に延びました。
1960年当時は55歳定年で、60歳から年金を受給し始めても、受給期間は短かったのです。しかし、寿命が延びたため、事情が変わりました。2017年の家計調査では、無職の60歳以上高齢者の単身者と夫婦2人世帯の家計収支は、単身者で15万4742円の支出、夫婦2人世帯では26万3717円の支出なのに、いずれも毎月4〜5万円の赤字が出ています。
預貯金の取り崩しで埋めていますが、長生きすれば預貯金も底を尽きます。現在赤字の老後家計でも、収入の多くが公的年金で、これが支給されないなら、60歳以降も収入確保が絶対必要になるわけです。
定年が延長されても給与は減額されます。しかしそれでもなお、少しでも節約に励み貯蓄に回さないと「長生き」が「生き地獄」に直結する時代になったのです。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 経済の話』
監修:神樹兵輔
日本の社会をとりまく環境は日々変化を続け、日本経済を知ることはイコール「世界や社会の今」を見ることにもなる。行動経済学から、原価のしくみ、生活に密着した経済の疑問や問題点など、いま知っておきたい経済の基本を、身近なテーマとともに図とイラストでわかるやすく解説、読み解く一冊。
公開日:2021.04.19