砂を読み石を想うのが枯山水の庭
枯山水とは、水をつかわず、石と砂、少々の苔や灌木で山水の風景を表現した庭です。室町時代に発展した禅宗の影響が強く、禅の悟りを庭で表しているともいわれます。あまりにも抽象的な表現なので、とまどう人も多いかもしれません。しかし素直な気持ちで見れば、その豊かな世界を楽しめるようになります。
まず砂に注目してみましょう。ほうきで付けられた砂紋(箒目)が直線に近いなら、水面の穏やかな沼や池です。うねりがあれば川、うねりが大きければ海、半円を並べた砂柄(青海波は)は荒海だと考えられます。
次は石です。沼地を表現しているとき、石は伏せたように置かれます。大海では、島に見立てるための大きな石が横たえているでしょう。川に立ち上る石組みは滝です。もし尖った石を組み合わせていたら、荒海の荒磯を表しています。
以上が、枯山水の庭における砂と石の原則です。これを押さえたうえで、改めて庭全体を見てください。ひときわ目立つ背の高い石が主石と呼ばれる、水の始点です。
そこから砂紋に沿って目を移せば、上流から下流へ、ときに淀みをつくりながら、入江を経て大海に至る川のストーリーを想像できるでしょう。石も、上流にはゴツゴツした大きなものがあり、下流は丸みを帯びたもの、海には荒磯に立ち向かう頑強な石組みがあることもわかるはずです。
枯山水の庭を、人生に置きかえて鑑賞する人もいます。大きな水紋に悟りを見たり、青海波を人生の試練ととらえるなど、解釈はさまざま。抽象的だからこそ、自分なりに思索を巡らせる余地が多いのも、枯山水の魅力です。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.01.17