しめ縄と鳥居からのメッセージ
神社と寺院の違いはいくつもありますが、その一つはしめ縄と鳥居です。しめ縄は蛇の交尾を表したものです。脱皮を繰り返して成長する蛇は再生と永遠の生を象徴する、神に近い存在と崇められてきました。
しめ縄や垂串に垂らされている白い紙(布)は御幣といい、鷺のような白い鳥を象徴しています。天空を自在に飛ぶ鳥は神の言葉を届けるメッセンジャーであり、ここが神域だと示しているのです。蛇と鳥には、境内を邪悪なもの(邪鬼)から守る役割がありました。蛇は邪鬼を威嚇し、鳥は鳴き声や羽音で危険を知らせます。
鳥居はその名のとおり、神域を示す鳥の止まり木を象徴しています。つまり、しめ縄と鳥居は、聖域と俗域を区別する結界であり、同時に聖域への入口でもあるのです。
鳥居は、本殿に近いほど小さくなります。理由は諸説ありますが、本殿に近くなるにつれて小さくなるのは、より濃密で、限られた聖域を示していると考えればいいでしょう。
鳥居の形にも違いがあります。古来から二つの系統があり、一つは直線的でシンプルな柱と横木で構成された神明系、もう一つは柱を少し内側に傾斜(転び)させ、横木に反りを持たせた曲線的な明神系です。
この2形式を基本に、さまざまなバリエーションが登場します。たとえば神明系は黒木鳥居、鹿島鳥居、伊勢鳥居、陵墓鳥居など、明神系からは住吉鳥居、春日鳥居、稲荷鳥居、三輪鳥居などがうまれました。
素朴な神明系鳥居の方が古いと思われがちですが、これは単に系統の違いにすぎません。また神明鳥居のある神社が必ず天照大神を祀っているとも限りません。
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「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
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只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
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出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2022.10.07